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次の瞬間、今まで静かだった駐車場内に女性達の黄色い声が響き、正面ほどではないが小さな集まりが出来てしまった。
きっと、正面玄関前の場所取りに出遅れた集団が、せめてひと目でも彼らの姿を見ようと待ち構えていたのだろう。
「きゃー! 赤星くん、早緑く~ん!」
「こっち向いて、葵くん!」
それらの声に先に車を降りた葵は軽く会釈を返して入り口へと向かう。
そして、局の扉を開け入ろうとすると、一緒にいると思っていた純がいないことに気づき振り返る。
「純ちゃん、これ受け取って」
「あ、えっと……」
すぐ後ろにいたはずの純が困ったような表情で今にも女性陣に取り囲まれそうなのを見て、葵はさっきまで怒っていたことも忘れ、慌ててその場へと戻る。
純の腕を引き寄せて集団から救出すると、葵は完璧なアイドルスマイルで彼女達に言った。
「ごめんね、プレゼントは事務所宛に送って。ちゃんと俺達に届くから」
その笑顔に見惚れて一瞬周りが静かになると、今度は葵に助けられた純が安心したのか、これまた満面の笑顔を見せる。
「うん。いつも、ありがとうね」
さすがに葵と純のダブルスマイルには、彼女達も黙ってはいられない。
「可愛い~!」
「二人とも大好き!」
また一気にわいた歓声に、これ以上は危険だと判断した葵と純は今度こそ二人で建物内へと逃げ込んだ。
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