まさかの……密会?

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まさかの……密会?

 その日、葵は誠と二人で雑誌の撮影のため、都心から少し離れた撮影スタジオにいた。  まるで倉庫のような外観のスタジオの中には、その見た目とは正反対のなんともポップな光景があった。  バックに明るい緑のシートが広げられ、その前には白の四角い箱や大小様々なカラフルボールが転がっている。  そのセットの中央で葵は目の前のレンズに向かって、フラッシュが光る度にポーズを変えていく。 「いいよ、葵くん。もっと笑って」    カメラマンからの指示に、葵は見事なアイドルスマイルを返す。 「じゃあ、今度は誠くんも一緒に入ろうか」 「はーい」    カメラマンの言葉に返事をしながら、誠が箱に座る葵の横へと移動する。 「マコがいてくれて助かった。このセットに俺一人だと、なんか気恥ずかしくて」 「だいじょぶよ。葵ちゃん、十分可愛いから」 「…………」    カメラに笑顔を向けたまま、サラッとそんなことを言う誠に、撮影中だということを意識した葵は『お前には言われたくない』という言葉を飲み込んだ。  そのせいで、多少引きつってしまった葵の表情に気づいた誠はさり気なく葵の後ろへと移動して、その背中へと覆いかぶさるように抱きついた。 「ほら、そんな顔しないの」 「……誰のせいだよ」  さらには頬を指で突かれ、葵はふて腐れて唇を尖らせる。  そんな葵の態度に誠は小さく笑って小声で言った。 「でもね、葵ちゃん。早く終わらせないと、東京に着くのが夜中になっちゃうよ。ただでさえ、だいぶおしてるんだから」    その言葉に葵は今の状況を思い出す。  今回の撮影は元々が午後からのスケジュールだったのだが、移動とこの前にあったインタビューに思った以上に時間をとられギリギリのタイムスケジュールになっていた。 「そういえば明日って、久しぶりに外でのロケだよな?」 「運の悪いことに、晴天だって」    外での撮影日が晴れなんて本来なら喜ぶべきだが、あまりに強い日差しは吸血鬼である葵と誠にとっては死活問題である。  これは少しでも多く睡眠と栄養をとって、万全な体調管理で明日をむかえなければいけない。 「一分でも早く終わらせよう!」 「ですね」    同じ目的の二人は、その後の撮影をこれでもかと言うほど愛想を振りまいて、スピードをあげた。  それでも、やっぱり撮影を終えたのはすでに日が落ちて辺りが暗くなってからだ。 「お疲れ様でした!」 「ありがとうございます」    衣装も早々と着替えて荷物をまとめると、葵と誠は機材を片付けているスタッフへと声をかけて、スタジオ内から外へと出る。 「純さんが車で迎えに来てくれるから」 「マジで?」    都心からわざわざ来るなんて、と葵が少し驚いているとスマホを弄りながら誠が説明してくれる。 「あいつ、今日オフだから。それに、その方が俺も葵ちゃんも寝て帰れると思って」    確かに誠の言うとおり、自分達の状況をわかっている純のお迎えなら、少しは気を使わずに身体を休めることが出来るかもしれない。 (そうは言っても、誠のことだからきっと純が退屈しないように話し相手するつもりだろうな)    心の中でそう思いながらも、葵は素直に誠達の好意を受けることにした。 「だいぶ前に連絡しといたから、そろそろ着くころだと思うけど……あっ……もしもし?」    どうやら純からの電話のようで、誠は通話したまま「ちょっと見てくるね」と、葵に声をかけてその場を離れていった。
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