序章 星の降る駅

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序章 星の降る駅

── 2034年12月22日(金) 僕は篠田エイジ、三十歳だ。 今日もいつも通り出勤して真夜中までオフィスに残る。いわゆるブラック企業だ。 僕はちゃんと学歴を積んだはずだ。それなのに毎日会社の奴隷になっている。 僕は帰りの真夜中の星空を見上げる。とても綺麗だ。まるで僕らの哀しみを矮小化しているかのようだ。壮大な景色である。 あの頃の僕は何だったんだろう。 何になろうとしてた? どんな仲間がいた? どんなことで悩んでた? 若者の頃の記憶が全くない。しかし昔の理想と掛け離れた現実にいることは知ってる。 空を眺めていても聳えるビルは邪魔をする。あの頃と随分変わったな。自然なんてのは空だけだ。 駅の自販機で温かいコーヒーを買った。手が悴んでいたので丁度良かった。 改札を抜けていつもの電車に乗り込む。 家に帰っても自分一人しかいない。ひどい生活だ。 明日も続く社会の水流は止まらない。僕はその中の一部だ。 しかし今はもう忘れたい。 中年の会社員の汗や頭皮の脂が染み付いた窓にもたれる。スーツが汚れるがそんなのどうでも良かった。 僕はあの頃なりたかった自分だろうか。 そしてあの頃の自分は今も残っているか。 丁度この季節だ。あれからもう十五年も経つのか。
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