第12章 花火と君と謎

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第12章 花火と君と謎

「チャーリーさん?」 まさに彼の顔だった。銃を握っている。 「あ、」 彼は逃げ出す。 しかし、すぐに捕まる。すぐ先に交番があった。 「おいやめなさい!」 彼は暴れていたが、たちまちひれ伏した。 「……つまらぬことでやめてくれ」 警官に怒られた。何故だ。 「あのねぇ、この世界では法が無いの。人殺すってのも……説明しにくいな」 「えっとねぇ……」 二人組の警官が全知識を絞って教えてくれた。 この世界は、人の生まれる前の状態の人も居るらしい。撃たれたら世界から消えて、現実世界の方で産まれる、という理解しにくいものだだった。 つまり来世ってことか。射撃で生まれ変わるのか。 「痛みは感じないんですか?」 「弾の強さは人それぞれだよ。俺もいつ撃たれるかな?」 「このくらい知っとけ。ツアー客だとしても」 はーい、と気の抜けた返事で後にした。この世界は面倒で疲れた。 ということは代表が生まれ変わったってことか。つまり選挙が行われる。 「あのぅ……」 チャーリーと思われる人が着いてきた。 「私はチャーリーの弟、レオです。ここで生まれ変わり業を担当してます」 「そうか。だから似てるのですね」 全く同じではなく、左眉の上にほくろがあった。 「すみませんでした、勘違いして」 「いや私も紛らわしいことしてしまってすみません」 和解の握手。そして別れた。 「恥ずかし……」 「ってかこの世界難しいな」 「恥ずかしくて死にそう……」 彼女がふらふらしていた。恥ずかしくて目眩がするなんて変わった体質だな。 「大丈夫。あんなの言われないと知らねーし」 僕も死ぬほど恥ずかしかったが。 「どこ行く?」 時計の針は円の三分の一を分けた。つまり十六時だ。 「とりあえずカラオケ……」 「またぁ?」 階段を下りる。つい一時間前に出た部屋に戻る。ねぐらに帰るカラスのように。 「はぁ……デートって疲れるね」 「ごめん。僕が遅れたから……」 「大丈夫。時間はいくらでもあるから。まず鬘取ってよ」 言われるまで気付かなかった。 「はぁ杞憂ね」 「そうだね。なんかごめん」 「ってことはあの代表は生まれ変わったのか。赤ちゃんに」 「そうか」 「赤ちゃんって嬰児(えいじ)って言うらしいよ」 「そうなの」 反応に困る。これがカップルなのか? 「恋愛とかけ離れた所で生活してたから、どうしようってね……」 「本当に難しいよね」 これは二人で話が合った。 「こんなこと話すカップルっているのかな?」 「変わり者同士なんだろ!それにカップルは世界で一つしかないし」 映画の決めゼリフのように言ってしまった。 「あなたのそういうとこ好き」 「本当に?結構気持ち悪いって自覚してるし……」 「じゃあ何で言うんだよ?」 「健康的で文学的な最低限度の恋をしよう」と言ったのは彼女だ。 僕は噴き出しそうになった。 「ありがとう。憲法二十五条みたいだね」 彼女は目を大きく開ける。 「あなたって本当に変わってるね」 「君こそ」 一時間無料の期限が過ぎる前に退出した。階段からは夜と花火が驚くほどマッチした風景が待っていた。 「今日って祭り?」 「毎日上がるらしいよ」 暫く二人で眺めた。これが僕の初めてのデート。 黄色に染めた髪、健康的に灼けた肌、サファイアのような眼。 今は地味な服装だが、着物を着せたらどうなるだろうと妄想していた。 花火は流れるように打ち上がる。広がって落ちていく。 何年か見ていない。花火の音を家で聴きながら、「彼女できたら観に行きたい!」って思っていた。 もうアドレナリンで脳がパンクしそうだ。 夜遅くなる前に解散した。 「後はRailでね」が別れの挨拶となる。 部屋に戻る。また不動産屋寄らなかったな。あと十日程で期限が来る。 今日が初デート日。一月二十日、一生忘れられない日だ。 その日は疲れたので早く眠りに着けた。 ─2070年1月22日(水) 誕生日だから早起きしたくなった。しかし、二度寝で十時。 今日は不動産屋に行かなければ。端末を開く。 「ツヨシ)誕生日おめでとー。パーティー開いてやるよ昼から来い」 本当にタイミングが合わな過ぎる。 「エイジ)ごめん。不動産屋行くわ。今度にして」 するとすぐに返信が来た。 「ケンリュウ)誕生日に開かなくちゃ意味無いぞ」 「マサキ)来て下さい。引っ越しの期限は二月まででしょう?」 仕方なく行くことにした。昼まで時間があるので不動産屋に行こう。 こないだのデートでいろいろ買わされた結果、おけらになってしまった。 良い物件は見付かった。宿から二、三キロメートル圏内だ。自然が多く建物が少ない為あまり売れてなかった。 そこにすることにした。家賃の仕組みが理解不能だったがしっかり教えてくれた。 転居日は来週火曜日。期限は守れそうだ。 契約して店を出た。白金のように薄く光る太陽は僕を急かせた。 今日で十六回目の誕生日。ってことは十六歳になる。けれど異世界は現実の五十年後だから…… 面倒だ。十六歳ってことにしておこう。 奇遇にも十六回目と六十六回目の誕生日が同時に来るとは。 「遅ぇぞ。みんな待ってるぞ」 集合は郊外のレストラン。女子も男子も全員だ。 「ホントにありがとう」 サラがおもちゃをねだる子供のように拗ねていた。長時間の説得の末、応じてくれたのだろう。 「俺の時、お前来なかったよな?」 「熱出てたんだよ。ごめん」 ツヨシのパーティーは十三日の成人の日に行われたそうだ。異世界にもきっちり祝日がある。 「ハッピーバースデー!エイジ君。暫く宿に一人で寂しくなかった?」 メイがわざとらしく聞いてくる。 「大丈夫だよ。これでも一応男子だし」 「これをもちまして、エイジ君の誕生日パーティーを開きたいと思います!いぇーい!」 チャーリーもしっかり来てくれた。 「ありがとうございます。本当に」 「大丈夫。異世界ではみんなの誕生日を知人で祝うの」 「そうなんすか?」 誕生日なんて友達に祝ってもらったことなんて指を折るほどしかなかった。 「エイジ君って今日誕生日なんですか。今日はカレーの日、ジャズの日……」 サラが閃いたように目を開いた。何か思い出したのだろう。 「今日はジャズパーティーがあるから抜けます!」 無表情でギターを持って去っていった。 「全く。サラちゃんいつもそう……」 「気にしないでいこう!」 「恒例のプレゼント!私たちからまとめて渡します!」 チャーリーが差し出す。何冊かの塊だった。 「えっ?不動産ガイド?」 みんなそれだった。多種多様なものだ。どうせならTシャツなどが欲しかったが。 「エイジ君、部屋決まってないんでしょ?みんな心配してるんだよ?」 「あ、ありがとう」 部屋はさっき解決したのだが。戸惑いながら頷く。相手が折角選んでくれたはずだ。 みんなは笑う。 「エイジ君って純粋だね。ってか天然」 「天然記念物みたい!」 「おい、マジで思ってたのか?」 「騙され安過ぎだろ!」 「エイジ君。天然過ぎます。よく詐欺に合ったりしませんか?」 「えっ、マジじゃないの?」 釣られてみんな笑う。 「エイジ君、それネタじゃないよね?」 「いや違います」 チャーリーにも笑われる羽目に。恥ずかしい。 「誕生日おめでとー!」 その後にTシャツや、 靴下を貰った。一つだけ何の界隈か分からない厚い本があった。 「ありがとう、みんな。なんか申し訳ないな……」 「大丈夫。これが異世界よ。今幸せでしょ?」 「……まぁそうだけど」 「ならいいの。楽しみましょ!」 その後に豪華なフルコース、ボードゲームをして盛り上がった。 本当にありがとう。これに尽きる。 夕方の花火が一日を締め括る。とても幸福だ。 生きててつまらない現実とは違う。僕らは幸せになれたんだ。
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