第14章 草原と寝転がる君

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第14章 草原と寝転がる君

博物館を抜ける。すると草原が広がっていた。 「自然は保護されていますね」 若草色に広がる草は新鮮だ。確か緑は目に良い色らしい。 「あ、濡れてる!」 ツヨシはいきなり飛び込んだそうだ。背中が濡れている。 「昨夜降った雨ですね。それか先程の温度差の為ですかね?」 露が光る。久しぶりの感覚だ。 「ってか一年前の俺達って……」 「受験期だったね」 「……あ、そっか」 不自然な返答に驚く。みんな公立なので受験はしたはずだ。 「どうした?」 「いや、何でもない」 ツヨシが珍しく直隠しする。 「おい、みんな来いよ!背中濡れるくらいで避けてんじゃねーよ」 「お、おう」 背が濡れるがすぐに乾くだろう。チャーリーがもたらした"晴れ"がある。 青空を眺める。考え事するのには丁度いい場所だ。料金は掛かるが。 横に流れていく雲。かなり風は強い。 気分爽快だ。これから色々あるだろうけど忘れよう。どうせ異世界にピンチは付き物だ。 「あれがハロか?」 「そうです」 太陽の周りに枠が見える。旅の始まりにマサキが言ってたな。 「あのさぁ、もし俺達が明日居なくなったら……」 その言葉が耳朶に入った。まさか、と思う。 「何だよ急に……」 曖昧な言葉で逸らす僕。それを三人は待っていたかのように笑う。 「いきなりごめんな」 「その時にならないと分かんないよ」 取り敢えず話題を変えたかった。 「まぁな。そりゃそうだ」 「この話やめにしない?」 「そうだな」 不思議な雰囲気が芬々と漂う。 「何でもないや。ごめん」 空気が凍り付く。 「明るくいこうぜ」 「うん」 観覧車に乗ることにした。一つ一つのカゴに色がある。 「何色にする?」 「何でもいいよ」 「じゃあ黒色だな」 「黒色はやめて下さい」 「何でだ?」 「黒は光を集めるのでとても暑いですよ!」 僕らは白色に乗った。外から俯瞰できる景色はとても美しい。 奥には森がある。様々なアトラクションも。メリーゴーランドにジェットコースター。 「すげぇな。ってか木綺麗じゃね?」 「確かあれはスギですかね?」 ──一方、ケンリュウ 「苺ミルクティー飲んでもいい?」 「いいよ」 俺は端末を開く。 「ツヨシ)そっちはどうだ?」 「ケンリュウ)普通だよ」 「ツヨシ)気を付けろ。そいつはかなり強引らしい」 「ケンリュウ)分かってる」 そう。彼女は強引だ。エイジからも聞いたが、小悪魔なキャラが激しいらしい。 「ごめんね。結構並んでたから」 「あ、いいよ」 「何してたの?」 慌てて端末の電源を切る。 「何もしてないよ」 「あのさ、私今フリーターなんだ。あっちの世界で」 「確か高校辞めたって言ってたな」 「それでね、お金貯めて通信制入って警察目指そうかなって」 「け、警察!」 「うん。犯罪とか許さないから」 「パティシエにでもなるのかって思ってたよ」 「将来まで料理はしたくないな」 「ってかすげぇ夢だな」 俺の夢……まだ決まっていない。数学やスポーツ、数多くの驥足は伸ばしたが、そのせいで中々決められない。 「バイト何やってる?」 「今は百円ショップとか。掛け持ちしてるから」 「ふーん、すげぇな」 「でもこうするしかないから」 「親も働いてる働いてるんだろ?」 「親は……去年交通事故で……」 「ごめん。無神経で」 「大丈夫。私も言いたかったから」 「何で?悲しいでしょ?」 「そういうのを共有し合うのが人間でしょ?」 彼女の理論に打たれた。確かにそうだ。 「ってかどこ回る?」 「どこでもいいよ」 「じゃあカフェランド……」 そこはスイーツの食べ放題。かなり高いらしいから元を取らないと…… 「まぁ、いいよ。俺はあんまり食わんからな」 「新作のタピオカパンがあるの」 「女子ってそういうの好きだよな」 「男子だって下らない話ばっか!」 「は?」 「八割下ネタでしょ?」 「ちげぇよ、誤解だって」 沢山のアトラクションに誘惑される。どれも乗りたくなるようにできているのだ。 「今日ありがとね。私沢山の人と関わりたいし……」 「そういうことか」 「私、引かれがちなの。別に変わってないよね?」 「まぁ少しな……」 「えっ?」 「エイジに告白の圧を掛けるのはやめた方がいいぞ。好きじゃないと思うし」 「えっ?だって篠田って変わってるよ」 「あいつもだけど。やめておけよ」 エイジ曰く、メイが「好きでしょ?」と迫ってくるとのこと。 メイ曰く、エイジが「手貸して」と言って握ってきたとのこと。 どちらも変わり者だから仕方ないな。 ──一方、エイジ 「あいつ誰だ?あの野原にいる」 観覧車の窓から覗く。手を双眼鏡のようにする。こうすると若干見やすくなるっというのが持論だ。 「小野寺さんですかね?」 「マナさんか」 「お前、名前で呼んでるの?」 「いや……」 そう。僕は自分の中ではそう呼んでいた。 「あいつ良いよな。普通に彼女でも違和感ないし」 「そうですよね!」 どうやらみんな対象らしい。実は僕は彼女が好きだ。 「エイジだよな?あいつと来たの」 「そうだよ」 「どうだった?」 「ホームの端で泣いてたから僕が慰めてた」 「マジで?」 「ちょっとだけだけどバグしたよ」 「は?何だよ?」 「羨ましすぎます!」 草原に寝転がるマナ。画になる光景だ。丸で大仏の後光のように輝いていた。 「あーいう奴って見ててパワー貰えるよな」 その通り。クラスの隣の席に居たらどれほど幸運か。 「陸上部らしいよ。スタイルも良いよな」 息を飲む。 彼女が他の二人に取られそうだ。 「僕、初日の夜告られたよマジで」 「えっ?どゆこと?」 「いきなりだよ。ラブストーリーは突然に的な」 「えっ、てことは二股か?」 「違うよ。いきなり過ぎて断った」 「勿体ねーぞ。俺が告る」 「いや、僕が告白します!」 こんな茶番で盛り上がる。外には僕らに勿体無いくらいの景色が広がっているのに。 「ご乗車ありがとうございました!」 観覧車を後にした。丁度昼が闌けた頃だ。 「どこで飯にする?」 「寿司屋があるそうです」 「ならそこだな。久しぶりの和食!」 暖簾を潜る。かなり空いていた。 「何だ、人気ねぇのか」溜息を吐いた。 「いらっしゃい!」 「培養した物にしますか?それとも元本でいきますか?」 「は?」 意味不明だ。 「この世界では、食料を永久的に持続させる為、化学技術で培養してるんです。味は変わりませんよ」 「なら培養か。そっちが安いし。セット三つで!」 「少々お待ち下さい!」 この世界って不思議だな。寿司の味は全く変わらなかった。 「さて?」 「第二博物館行きましょうよ!」 「えっ、アトラクションだろ?」 「どっちでもいいよ」 博物館に行くことにした。そこには技術の展示がされていた。 「何だこれ?戦隊もののベルト?」 「変身システムらしいです。力を何倍かに転換するそうです」 よく仮○ライダーのベルトにありそうな形だ。ワンプッシュで変身できる。 「あっちで実演してるぞ!」 スーツアクターが掌サイズのスイッチを胸から落とす。すると腰で止まり、ベルトが巻き付いた。 そしてスイッチを押す。すると全身をスーツが覆った。よくある戦隊ものだ。 「こんなのいつ使うんだ?」 「非常事態だろ。空も飛べるらしいし」 値段は一億近く。歩数だとしても十億歩。不可能に近い価格だ。 それから培養技術等を見た。元の食料のデータに沿って永遠に作られるそうだ。 「木々達の代わりに酸素を作り出す物が開発されたようです」 あり得ないものばかりだった。 また、近年では、変身システムの偽物で暴走する人が多いらしい。変な世界だな。 「リアルで仮○ライダーの世界や」 「そうだな」 博物館を出る。その後のアトラクションは狂気だった。 軌道に沿って回る。胃が撹拌されて寿司が出そうになる。口に風が吹き込み、否応なしに乾燥させられる。 メリーゴーランドでは、この年になると恥ずかしいな、と痛感させられた。 水に飛び込むスライダーでは、油に入れられて揚げられる唐揚げや天ぷらの気持ちになれた。泳げない僕は恐怖でしかなかった。 お化け屋敷では無造作に追突され、数時間痛かった。 「楽しかったな」 「まぁね。こんな所来たことないし」 最後にVRのアトラクションに乗る。厚い眼鏡を付ける。 すると中の世界に引き込まれる。僕は空を飛ぶ話だった。 「俺なんか戦時中のやつだった」 「僕はコンピューターの中で迷子になる話でした」 一番平和で良かった。 空がオレンジ色の帳に包まれる。東門で集合する。 「楽しめました?博物館見て勉強した?」 「はーい!」 「次の活動は四月まで無いよ。だから満喫してね!」 「はーい!」
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