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プロローグ むかしむかしのものがたり
この世界はありとあらゆる物語で溢れかえっています。
おとぎ話や空想の話などなど、たくさんありますが、その中で最も多いのは、人生という一人ひとりが持つ物語です。そんなのは、ごまんとある。
あー、自己紹介がまだでしたね、失礼。初めまして、私は《語る者》。
全ての物語を知り、語る存在、とでも思ってください。え、全てってどのくらいって?ふふふっ、そうですね、文字通りこの世界の全て、そう、あなたの物語も。
さて、今から私が語るのは大昔のお話。
むかーしむかし、あるところに50人の神様がいました。
その神様は一人ひとり特別な力を持ち、一人ひとり国を創りました。
こうして世界の均衡は保たれ、とても平和でした。
ところが、1人の神様はふと思いました。
『なぜ我々は一つしか手にできないのか』
この神様_Xはそんな疑問を抱いて、いつしかこの世界を自分1人のものにしたいと考えるようになりました。そして、思い付いたのです。
『そうだ、戦争を起こそう』
そして、戦争で勝った人がこの世界を独り占めすることができるとすればいい、と。
そうと決まれば、策を講じなくては。自分が首謀者だと気付かれず、かつ確実に自分が勝利し、世界を手に入れられる策を。
Xは必死に考えました。考えて考えて、ようやく策を講じ、準備が整いました。
そうして、世界を誰か1人のものにするための戦争が起こりました。
それから、500年。神様たちは力をぶつけ合い、たくさんの人が死に、みんな疲れ果てていました。
そんな中、突然、戦場の中心が光り輝いて、1人の人間が現れました。
その人間は神様たちを見て、悲しげに言いました。
『こんな戦いをして、何か意味はあるのか?世界を誰か1人の物にして、世界は平和になるのか?』
神様たちは思いました。この人間の言う通りだ、と。
それに気づいたのか、人間は神様たちに提案しました。
『俺と契約しないか?世界を守るために』
その契約は、神様たちにとって、とても厳しいものでした。
本来、神様というのはある一定の年齢に至ると歳をとらず、永遠に生き続けることができる。そう、不老不死なのです。
しかし、人間が提案した契約は、人間は自分の命を賭し、世界の均衡を保つ代わりに、50人の神様の期限なしの命を対価としたものだったのです。
神様たちは悩みました。悩んだ末、人間と契約することを選んだのです。
それを聞いた人間は笑って言いました。
『契約成立、だ』
そうして、世界に500年ぶりの平和が訪れました。
神様は永遠の命を失いましたが、人間と同じように生き、平和な世界で今も幸せに暮らしています、とさ。
めでたしめでたし。
え?Xはどうなったかって?
ふふふっ、さあ、どうでしょうね。
もしかしたら、彼の一族は今も何かを企んでいるのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
なになに?あー、確かに私は知っていますよ。全てを知っているのだから。
でも、それを教えてしまってはつまらないでしょう?
さあ、この話はおしまい。
さてさて、次は誰のお話をしましょうか。
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