第2話 最大の依頼とか最悪な許婚とか聞いてねぇぞ

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「はぁ……ホントいっぺん死ねばいいのにな、この親父(ジジイ)」 「ちょっ、ちょっと、殿下!?何恐ろしい事を(おっしゃ)ってるのですか!?落ち着いて下さい!!」  ヤベッ、つい口に出しちまった。  アランのストップがかかり、咳払いをしてなんとか平常に戻る。 「おっほん……失礼致しました。それで、ヴァルゼン様、ご依頼というのは……?」 「うん、君に神界を回って情報を集めてきて欲しいんだ。それも只の情報じゃない。かなりその国において重大で機密になるようなもの」 「それが依頼でございますか?」 「うん。ジャルシェが信頼している君に頼みたいんだ」  ………って待て待て待て。俺はこのジジイに信頼されている訳じゃないですよ!?逆にこのジジイの終わらせなかった仕事が全部俺に回ってくるんですが!!………なんて口が裂けても言えないので苦笑いで誤魔化す。 「仕事の内容は分かりました。しかし、何故私にその仕事を?他の情報屋もございますが……」  俺が尋ねるとヴァルゼン様は優しい笑顔を向けた。 「かなり内密の仕事だからこそだよ。シアンドールは完全秘密主義。外に()らす心配ないからだよ。シアンドールが、いや、君が適任だと妻も同意したんだ。詳しい事は話せないが、この仕事を引き受けて欲しいんだ」  セレネー様も同意の上なのか。引き受けるかどうかで迷い、俺は言葉を詰まらせた。  皇子といっても暇な訳ではない。むしろ、仕事が沢山ある。それをこなす中で俺は情報屋をやっているのだ。だから、依頼完了まで数日で済むこともあるし、数ヶ月かかる時もある。そして、一人一人振り分けられている仕事は異なるが、皇子には必ず担当しなければならないものがある。  それは、兵隊の指導だ。勿論、兵の中で兵長や隊長などの役職が振り当てられているが、兵士の数が膨大で彼らだけでは全ての兵を強化する事ができない。  皇子の他にもアランのようなかなりの腕を持つ人が指導を担当する事もあるが、それでも人員が不足する。そこで幼い頃から剣術を習わされる皇子が兵士の指導を行うのだ。俺も強い訳ではないが、一兵団を担当している。が、運動馬鹿な兄、クルシウスが自分の他の仕事を放ったらかしにして俺の担当してる兵団の指導もする上に、その兄の他の仕事を俺がする羽目になるのだ。これが皇子の仕事一つ目である。  その他はそれぞれ異なるが、俺は主に税管理、契約書の署名、他国との面談。  そんな中で秘密情報屋をやっているのだ。  ヴァルゼン様はシアンドールのことを父に相談して、結果的に親父がバラしたから、俺に頼みに来たのだろう。俺は答えをヴァルゼン様に伝えた。 「申し訳ありませんが、私一人が担当している事項がございまして。それを放ってまで、やることができないのです。それ故、そんな大きな仕事だと、何ヶ月、いや、何年かかるか……」   と断ろうとしていた矢先、父が話を切って入ってきた。とんでもない事を言って。
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