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そう言ってアランはすぐに俺の髪のセットに取り掛かった。
今日は正装という事もあって、高い位置で一つに結って、編み込みも入れて、先程のパーティーと少しアレンジを変えてある。髪飾りもいつもの適当感溢れるものではなく、小洒落たものである。
アランも髪より少し明るい赤色の豪勢な服を身に纏い、右耳の横だけ伸びた長い髪は金色の髪留めでまとめている。
アランは先に会場に行くと言っていねぇからな、暇だな。
「さてと、行くか」
しばらくして準備が整った俺は時間になったので成人の儀が行われる謁見の間に向かった。
神界では男は18で、女は16で成人を迎える。それ故にこうして神の言葉をもらい、加護を受け、成人したことを儀の参加者と神と酒を酌み交わすという儀式がある。通常は家族親類だけで集まり、神のもとに行くのは成人した本人だけであり、ひそやかに行われる。それが成人の儀だ。
毎日のように成人になった人が来るんだぜ?そりゃ家族間だけで神の言葉だけもらって帰る、の方が効率的だ。
しかし、あくまでそれは一般の神人のことであり、王族は違う。
俺たちの成人の儀は公に行われるのである。勿論、本人が嫌がればひそかにできることもできる。
だから、俺は嫌だと言ったのに……。あのジジイ、俺の意志を完全無視しやがって。まあ、今更嘆いたところで意味はないので、しっかりこなすがな。
「シアノ殿下、入場」
その声と同時に扉が大きく開かれた。
謁見の間の真ん中の通路には赤い絨毯が敷かれ、その両脇の広いスペースには大勢の貴族や軍人たちが膝をつき、俺に首を垂れていた。そして、正面には王かつ神である親父と、女王の母上が背もたれの部分がものすごく長くなっている豪華な椅子で着座している。
親父たちの座る場所に行く階段の前で俺は跪く。それを確認した親父は立ち上がり、俺の真正面まで来る。
「只今より、成人の儀を執り行う。成人した者の名はシアノ・ラル。太陽神の名の元に彼の今後に幸多からんことを。Helios Anacletus」
そう言葉を紡がれると、俺の体が温かな光に包み込まれる。そして、光は俺の中へと吸い込まれていき、やがて消えてしまった。それを確認して親父は再び言葉を紡ぐ。
「サンカ帝国第3皇子、シアノよ。太陽の加護は為された。私や歴代のヘリオスたちの力がお前に幸せを運ぶだろう。Syngharitiria」
「ありがとうございます、今後も国の発展と平和の為、精一杯を尽くす事を誓います」
そう言った俺に、親父はふっと笑って席に戻っていった。俺は立ち上がり、くるっと親父たちに背を向ける形になった。
ここからが王族の成人の儀のえげつないところだ。
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