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「それでは、順々にシアノ殿下がお呼び致しますので、枢機卿様、将軍様、伯爵様はそのままお待ち下さいませ。シアノ殿下、お願い致します」
「ああ。では、まず、アズワール卿」
「はっ!……シアノ殿下、成人おめでとうございます!」
「ありがとう」
先ほど説明した通り、成人した者は成人の儀に参加した者たちと、最後に神と酒を酌み交わさなければならない。一般の神人なら数人で終わるが、王族の場合、そうもいかない。国の貴族、将軍、伯爵、公爵などなど、100人を超える人数が参加しているのだ。そのぶん、飲む酒は多いし、対応も長い。
司会進行を務める宮廷内の執事にそのリストを渡されているので、名前がわからないということは起こらないが、成人してから飲める酒を成人1日目でこんなに飲んだら、酔って倒れやしないか?心配だ……。
そうして、1人1人と酌み交わしていくと残り10人といったところだろうか、ヴァルゼン様とセリーネ姫もリストに載っていたので、順番に名前を呼ぶ。
「ルナタレア皇国からお越し頂きました、ヴァルゼン・ユビル陛下」
「成人おめでとう、シアノくん」
「ありがとうございます」
そう言って、杯に注がれた酒を飲み干して、礼をし立ち去ろうとする直前、ぼそっとヴァルゼン様が呟いた。
「あの子は酒が飲めないからよろしくね」
え?あの子?…………もしかして。
そうヴァルゼン様の言葉を考えながら次に名前を呼ぶ。
「……同じく、ルナタレア皇国からお越し頂きました、セリーネ・ユビル皇女」
「はい。……この度は成人おめでとうございます」
そう言って杯に入った酒を飲もうとした瞬間、俺はとっさにセリーネ姫の手首を掴んだ。
「……えっ……」
「……飲めないんだろ?」
「……何で知っ……」
「シッ。それ、渡せ」
俺が小声で言うと、何がなんだかわからないという顔をしたセリーネ姫が杯を渡してきた。その杯に入っていた酒を既に酒を注がれていた俺の杯に追加で注いだ。
「ほれ。飲むフリだけしとけ」
「……わ、わかったわよ」
そうして、セリーネ姫は空の杯を、俺は少し多めに酒が入った杯を傾けて、飲み干す。
あー、やばいな、流石に酒が回って来たぞ。あとは酒が飲める兄弟とアランと親父だけだな。なんとかなるだろ。
アランは俺の従者だが、戦闘種族オバーン家当主、優秀で身分は普通の人より高いので、こう言った行事ごとだと貴族同様に扱われる時がある。
そうして、俺は他の兄弟と親父、アランとの杯を交わし終えて、用意された椅子にふらつきながら座った。
あー、疲れた。体がだるい。よし、もう終わったな。
と思っていたのに。
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