第1話 目立ちたくない皇子様には裏の顔がある

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第1話 目立ちたくない皇子様には裏の顔がある

「シアノ皇子、おめでとう!!」 「成人になられて……本当にめでたい!」 「シアノ皇子、万歳!!」  様々なお祝いの言葉が飛び交って、耳が痛いくらいに騒がしい。ギリシア神界のとある国の夜の空に花火が美しく咲く。踊り子たちは華やかに踊り、演奏家たちは綺麗なハーモニーで音楽を奏でる。神人たち(ひとびと)は宴で楽しそうに飲み食いしている。酒を飲みすぎて、踊り狂う人。腹がはち切れそうなほど宴で振る舞われた料理を貪るように食べている人。その周りで子供たちはキャッキャとはしゃいで遊び、駆け回っている。  ここは太陽神(ヘリオス)の国、サンカ帝国。そして今日、この国の第3皇子である俺、シアノ・ラルの18歳の誕生日パーティーが国を総じて行われていた。特にその首都アリアノでは、俺がいるので、より一層盛り上がっていた。 「あのお方がシアノ様!なんて美しい青髪!触ってみたいわぁ」 「はぁ……可愛らしい顔をしているのに、あんなにも大人っぽい色気を出して……惚れてしまいそうですわぁ」 「あら、貴女たち、シアノ様を見るのは初めて?よぉく目に焼き付けておきなさいな。シアノ様はあんなにも格好良いお方なのに、あまりに公式の場で現れないの。見納めかもしれないわ」  高貴な身分の女性陣は間近で俺を見てそんな風に噂をしているのが聞こえた。  お、よく分かってんじゃねぇか。俺も気に入ってんだよなー、この淡い青色の髪。……っておい、可愛いは余計だ。あと、公の場にできるだけ出たくねぇんだよな、俺。  公の場でしか身につけないシンプルかつ繊細で凝った装飾のある冠。儀式用の金の刺繍が施された赤色ベースの服。胸辺りまである長い青髪を高い位置で一つで結い上げ、垂れ下がっている髪で細い三つ編みをいくつか作ったいつもよりゴージャスな髪型。  ただでさえそんな堅苦しい格好をしているのに、どうでもいい女性陣の噂話を宴会の席で祝いの言葉を受けながら聞いていた。 「シアノ様、此度(こたび)は18歳の誕生日、おめでとうございます。この後に行われる成人の儀を楽しみにしております」 「ありがとう」  成人の儀とか、無理していい顔していい事を言うクソみたいな行事だろ。俺は楽しみじゃねぇし。 「18歳の誕生日おめでとうございます、シアノ様!これはつまらないものですが、我が国の名産物でございます!宜しければお召し上がりくださいませ!」 「ああ、美味しくいただくよ」  毒味してから、だけどな。あと、辛いものは苦手だから食わねぇし。 「シアノ様、お誕生日おめでとうございます。こちら、成人の祝い品として、最高の刀鍛冶に剣を打たせていただきました。貴方様の美しい髪色と同じ青色の刀身を持つ剣にございます。どうぞお受け取りくださいませ」 「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」  これが一番いいものだわ。激しく使って壊したらごめんな。
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