第1話 目立ちたくない皇子様には裏の顔がある

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 それから小1時間経ったくらいだろうか、俺のところに来る挨拶は終わったようで、一息ついていると、親父に呼ばれた。誰も俺の元に来ないことを確認してから席を立って、親父のもとへ行く。 「父上、どうかなさいましたか?」  普段だったら、親父呼びでタメ口なのだが、公の場なのでそれは控えて敬語で話しかける。 「少しいいか?この方達と私とお前の4人で話したいことがある」 「構いませんが……このお二人は?」  親父の面前に2人の人物がいた。  1人はとても和やかで優しげな雰囲気を醸し出す銀髪の男性。年齢は親父と同じくらいか少し上のように見える。気品のある銀色の刺繍が施された美しい服を身につけている。  もう1人は男性と同じく銀髪の女の子だ。俺と同い年くらいに見える彼女は、その銀髪がよく映える濃い青色のふんわり感のあるドレスを着ており、とても可愛らしい顔をしている。不覚にもドキッとしてしまう。  か、可愛いな……。タイプかも。  そんな下心があるようなことを考えていると、父が渋く低い声をいつもより低くして俺の質問に答えた。 「……それも後で話す」  少し深刻な顔をして言葉を紡ぐ親父に違和感を感じて、俺は親父と親父の前に立つ二人だけが聞こえるくらいの小声で囁いた。 「…………内密のお話なのですか、父上」 「ああ」 「そうですか。では、どの部屋で話しますか?」 「私の自室で話そう。一緒に今から行くぞ」 「承知しました」  そう言って親父たちと動き出したその時、「あ、それともう1つ」と親父が思い出したかのように呟き、俺を呼んで手招きする。なんだよと思いながら親父の所に行くと、耳を貸せ、と言うような仕草をするので、耳を傾ける。 「依頼したいことがある」 「……っ!?」  そう真剣な声色と表情で言われて俺は目を見開く。  おかしい、家族が知っているはずがないのに。……俺とアランしか知らないことをどうして親父が知ってるんだ?  動揺している俺を見ても親父は顔色を変えず、言葉を続けた。 「意味は分かるな」  その言葉を聞いて、俺はこくんと首を縦に振った。 「……少々準備に時間がかかるので、少し遅れていくことと、アランを同行することをお許しいただけますか?」 「ああ、大丈夫だ」  許可を得たところで俺はその場を離れ、アランの元へ行き、彼に声をかける。 「アラン、今すぐ移動だ。来い」 「え、でも、レイシア様の護衛がありますので……」  ちらっとレイシアに視線を投げると、双子だからか俺の言いたいことを分かっているかのように、こっちを見ずに彼女は口を開いた。 「構わないわよ。同じ顔した気に食わない誰かさんの成人の儀の為に私もそろそろ着替えたり、化粧直したりしなきゃいけないし」 「……一言多い。でも、サンキュ」 「はいはい、とっとと行きなさいよ」 「ありがとうございます、レイシア様」  アランもレイシアにお礼を言ったところで、俺たちは大広間を後にした。
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