第1話 目立ちたくない皇子様には裏の顔がある

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 そう話している間に俺の部屋の前に着いた。俺は扉を開けながら続ける。 「そんなことより、話戻すけど。依頼者は親父なのか、銀髪の人なのかは分からない。だからとりあえず、何があってもいいように準備しとくぞ」 「はーい」  依頼者?あっちの仕事?さっきから何言ってんだ、この皇子様は。  と今の会話を聞けば100人中100人がそう思うはずだ。  俺、シアノ・ラルは表向きは皇子、裏では秘密情報屋を営んでいる。  完全秘密主義、神界一優秀な情報屋『シアンドール』  それが俺の第2の仕事。目立ちたくない理由。目立ちたくない皇子様()には裏の顔があるのだ。  何故こんな仕事をしているのか。  答えは簡単。情報収集や隠密、変装、追跡等々……。どっかの国の「ニンジャ」って呼ばれる職に似ているようなことをするのが好きだから。  昔から変態な親父と変態な兄に付き纏われていたせいで、初めは気配を消すことを覚え、親父たちの行動範囲を把握することの為にやっていたことが、情報収集をするのは元々好きだったので、それを組み合わせてやり始めたただの趣味。そのまま好きだから情報屋をもう5年続けている。  店は俺が親父に譲り受けた山の頂上にある。その山は「一度入ったら出られない呪いの山」と噂を流して誰も近寄らないようにしてあるし、万が一入る者がいても、関係者以外が立ち入ることができないよう、(まじな)いをかけてある。  秘密裏にやってる理由も単純だ。そんな店をやってるなんて知られたら、『太陽神の息子の一流店』とか変な風に言われて面倒くさいことになるのは御免だし、何より王族がやるような仕事ではないので反感を買ったりもするかもしれないので、これらを避けるためである。だから、他者にはもちろん、家族にも話していない。  はずなのに。 「……親父が俺の店を知ってた」 「え!?ジャルシェ様が?どうして?」 「分からねぇ。……まあ、あの親バカのことだ。偵察用の精霊(シャルロッテ)でも飛ばして、たまたま知ったとかじゃねぇかなと思ってる」  実際しょっちゅう俺の近くに親父が召喚した精霊がうようよ飛んでるからな。まあ、対策はしてあるけど、100%じゃない。偶然知ってしまってもおかしくはない。 「まあ、そこは後で俺が聞いとく。準備できたか?」 「うん、バッチリ!」  そう言ったアランは店の書類を片腕に抱えて、空いている方の手で親指を立てた。  そうして俺たちは、親父たちの待つ親父の自室へと向かった。
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