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しかし、俺が店主であることは依頼をした人以外に知らないはずだ。しかも、俺の店は完全秘密主義なので、それを徹底するために俺は依頼者にお願いしていることが3つある。
1、依頼者は宛名を『シアンドール』と書いて、手紙で依頼をすること。このことは口外可能。
2、依頼者は他者にこの店のことを話す時、店の名前と上記のこと以外のことは話さないこと。
3、こちらから依頼完了の連絡をするまでは店への立ち入りを控えること。
この3点を厳守するという契約を依頼者と必ず結んでいる。そして、このうち、2番目を破ると口封じの(口が開かなくなる)呪いが自動的にかかるようになっているのだ。だから、依頼者が話したというのは考えにくい。
それなのにヴァルゼン様は俺が店主だと知っている。その理由が俺の頭の中で、ひとつだけ思い浮かぶ。嫌な予感がする。まあ、大体予想はついているが、確認といこうじゃねぇか。
「……失礼ですが、私が情報屋を営んでいることはどなたからお聞きに?」
「え、ジャルシェから聞いたよ」
……………………やっぱりそうかぁああああ!!
俺はできるだけ平静を装いつつ、ギロっと親父を睨み付ける。
「……父上、またシャルロッテを飛ばしましたね?」
「私が譲った土地で何をしているか気になったものでな、つい」
まあ、シャルロッテを飛ばしてくるのはいつもの事だ。慣れてるからな、それは許してやる。ここからが問題だ。
「……じゃあ、いつからご存知だったのですか?」
「いつからって、開店当時から知ってるぞ?お前がこの5年、皇子としての職務も忘れずに、並行して情報屋もやって、感心していたぞ」
「ストーカーかよ!!」
「失礼だな。親として子供の成長を見届けているだけだ」
「気持ち悪ぃから止めろ、今すぐに」
つい、周りも気にせずに敬語から普段の口調でツッコんでしまった。でもさ、そのくらい気持ち悪くね?ほんとに親かこいつは。
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