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全校集会にて、表彰式
今日の全校集会は二段構えだった。
前半、午前中は校長先生の話を皮切りに学校生活についての話、そのあとは一年生から三年生の交流会。
午後は外で球技大会なのだという。
競技はいくつかあって、どれに出るかは自由。運動部の部活をやっている生徒も多いから、得意なところに入って活躍できたり楽しんだりできたら、ということだろうか。
午後からのそう長くない時間とはいえ、運動系の活動になってしまった。蒼くんのほうが顕著だけど、二人ともあまりスポーツを好むタイプではないので、ちょっと憂鬱だろうなぁ、なんて思った私だった。
とりあえず午後からは置いておいて、まず午前の体育館での集会。
校長先生の話はいつも通り面白くなかった。お説教や教訓ばかりではないけれど、面白くない、こういうものはどの学校だってそうだろう。
だから私は別のことを考えながら、聞いていますという振りだけをしていた。
話は十分くらいで終わった。次は表彰の時間。部活や、もしくは勉強などで賞を取ったりした生徒の表彰だ。
体育館の舞台にあがって、校長先生から賞状やトロフィーなんかを受け取る、こちらもあまり面白くはない行事。
だけど今日はそんなことなかった。なにしろ碧くんが表彰されるらしいのだから。
はじめのほうの運動部の表彰が、早く終わらないかどうか、そわそわしてしまった。
ある表彰のとき、なんだかほかの表彰より生徒からのお祝いの拍手やざわめきが大きかった気がした。よく聞いていなかった私は、「これ、なぁに?」と隣の女子に聞く。
「聞いてなかったの? テニス部よ」
「ああ、そうなのね。ありがとう」
教えてくれたその子とひそひそそれだけ言って、私は前を向き直した。
テニス部はうちの高校でも強豪らしい。そういえば、全国大会に出場が決定とかいう噂を聞いたような。
必然的にほかの生徒にファンが多いとか、そういうことでしょう。そう思っておく。
舞台の上では二人の男子生徒が賞状を受け取っているところだった。二人は校長先生のほうを向いているので顔は見えないけれど、背格好が似ていたからきっと、片割れ同士なんだろう。
二人ということはダブルスかなにかなのかもしれない。しかし私はすぐに、次の表彰のほうに意識が行ってしまった。
「宝珠 碧くん。全国高校生文学評論で銀賞に輝きました」
全国で銀賞、つまり二位。流石にざわめきが起こった。
その中を碧くんは歩いて舞台へあがって、これまでの生徒たちと同じように賞状を受け取っている。堂々としていて格好良かった。
ただの幼馴染ではあるけれど、知り合いなのを誇らしく思う。
碧くんはすぐ舞台から降りることなく、校長先生の隣に並んだ。校長先生がなにか紙を見ながらみんなに言った。
「えー、宝珠くんはこちらの評論文から、アナウンスコンテストに出ることが決まりました」
またざわめきが起こる。校長先生は淡々と続けた。
「アナウンスコンテストは、チケットが必要になりますが一般観覧も可能です。チケットは無料ですが数に限りがあります。希望の者は、担任まで申し出るように」
それでおしまいだった。碧くんはお辞儀をして「どうぞよろしくお願いします」と言って、舞台を降りていく。
一般生徒も見られるんだ。
瑠璃はきっと喜んでいるだろう。
今日の放課後、いえ、昼休みにでも担任の先生を捕まえてチケットを確保しないとだ。
急にわくわくしてきた。そのあとの表彰も耳に入らないくらいに。
そしてそのあと小休憩を挟んで、一年生から三年生までの交流会。今回は違う学年の同じクラス番号……一年A組だったら、二年A組と三年A組と一緒になる……というように、縦割りで分けられた。
活動は歌だった。校歌の合唱。縦割りクラスごとに集まって、練習をして、そして最後に順番に体育館で披露するという形。
私は一年C組だったので、三年C組である蒼くんと同じ割り振りになっていた。
「葵と同じ割り振りなんて嬉しいな」
割り当てられた第二音楽室で、嬉しそうに言ってくれた蒼くんとちょっとだけ話ができた。あまりおしゃべりをしている時間はなかったけれど。
「午後、球技大会になっちゃったね」
「ああ、やだな……なんか、適当に卓球でもやっとくよ。ドッジとかだとボールぶつけられたら痛いし」
「あはは、私も安全そうなのにしとこ」
そのくらい。でも同じ部屋で、校歌だけど同じ歌を合唱できていると思うだけで楽しかった。
蒼くんは意外と、といったら失礼だけど、歌が上手いのだ。蒼くん一人の歌声なんてこの大勢の中では聞こえないけれど、歌っている姿が楽しそうなのは見えた。
最後に体育館で披露するときも、歌声がこの中で混ざっていると思うと私ももっと楽しくなってしまう。
今日の午前中は碧くんの表彰で誇らしくなったり、蒼くんと同じ合唱ができることで嬉しくなったり、楽しく過ごすことができた。
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