呻る双腕重機は雪の香り

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 部屋1るとき、念のため顔を隠しながら出ると案の定、彼が廊下で待っていた。 「おはようございま、ってお嬢様なにを?」  両手で顔を隠しながら出てきた私に対して、もっともらしい言葉が来たが、寝起きの顔を見られるのは慣れていない、もちろん使用人や爺たちにはあまり気にしたことがないが、蒲生さんに見られるとなると恥ずかしさが込み上げてくる。    そんな私に比べ、彼はずいぶんと綺麗な顔をしていた。  きっちり整えられた服装に、少しだけ乱れた髪と髭の剃り跡がない顔は、朝の新鮮さもあってか、とても綺麗だった。    もともと、化粧をしない私だったが明日からは少しぐらいはしたほうが良いのではないだろうかと思ってしまう。 「な、なんでもないの、それと明日からは朝の迎えはけっこうよ。 学園にいくタイミングでお願いするわ」    彼の頭の上に「?」マークが何個も浮かんでいるが、そんな彼を正面にカニ歩きの恰好で通り過ぎると、いつもより早歩きで向かっていった。  空気を読んでくれたのか、わからないが追ってはこない点は素晴らしい、昨日の私はそんなことは考えなかった。  なぜ今日になっていきなり気にしださなければならないのだろうか?  朝食も素早く済ませ、部屋で念入りに身支度を整えていく。  特に髪は今までにないくらい念入りにしていく。  使ったことのない頂いたあんず油でまとめ、引き出しの奥にしまい込んだ、去年の誕生日に父にもらった薔薇の香水を鏡を見ながらうなじへワンプッシュだけ吹きかける。  香りが馴染むハートノートまでに、授業の確認と制服の汚れをチェックしていく。  時計を確認し、今日はいつもより早めに出発するため、そろそろ部屋を出なければならない。  香水の香りが馴染んできたであろう時間にもなり、私はゆっくりと扉を開くと、彼は朝と同じような場所で待っていてくれた。 「行きますか?」  その問いに頷くと、廊下を玄関に向かって歩きだすが、彼は真横ではなく少し後ろに下がりながらぴったりと離れず付いてくる。  直に香水の香りがいきそうだが、どう思ってくれたのだろうか?  外では車が待機しており、うっすらと雪が溶けたボンネットに、まだ溶けていない雪が混ざっていた。  運転手が扉を開けて、私と蒲生さんを車内へ入れてくれる。  バタンとドアが閉まると運転手が私を見て微笑みながら言ってくれた。 「おや? 今日は珍しく香水ですか?」    珍しくなんて余計な言葉を付け足さないで欲しかった。 「そ、そうね。 たまには気分を変えてみたくて」    外を眺めて流そうと思ったが、今度反応したのは彼だった。 「やはり、とても良い香りだと思います。 ローズですか? お嬢様にとてもお似合いですよ」  外を眺めていた私の顔に一気に熱が伝わるのがわかった。  恥ずかしさが九割で残りの一割は嬉しが占めている。  それを見た運転士が深く帽子を被って目元を隠すとハンドルを握って出発を告げた。 「それでは、出発いたします」    
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