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「ちょっと! 塀壊れてる!」
「そのためでしょうね。 近隣の住民をどこにやったのかわかりませんが、人的被害が及ばないのは、こちらもラッキーです」
そう言っても、相手は人的被害を気にせずにこちらに向かってこれるとも受け取れた。
私を抱えながらも軽やかに駆ける蒲生さん。 とても頼りになるうえに、なんていうのか、その……。 顔の位置が至近距離なうえに、たくましい身体つきを直に感じられ、逃げているのに不謹慎だが、恥ずかしい気持ちになってくる。
それに、私を軽々と担いではいるが、本当は重いのではないだろうか? 今、そのような現状ではないのは理解していが、なぜか気になってしまう。
平均よりは少し痩せてはいるが、もし仮に【重たい】なんて思われているなら、どうしよう。
なんて馬鹿なことを考えているのだろうか、自分が嫌になる。
ただ真っすぐ私のために走ってくれている人を目の前に、そんな考えをすること事態間違いだと気が付く。
「私のために……」
自分の心のうちを、なぜか呟いてしまった。
気が付いているのかいないのかわからないが、彼は無言のまま走り続けた。
「お嬢様、聞こえますか!?」
大きな声で問いかけてる。 後方にはゆっくりと確実に迫ってくる双腕重機なる機械がある。
「あれは新型の双腕重機で、遠隔操作が可能です! 先ほどミラーで確認しましたが、操縦者はいません! どこかで我々を見ているはずです」
なるほど、ならばどこかに身を隠せれば、一時的に凌げる可能性はでてきた。
敵は必ず、見晴らしのよい場所でこちらを伺っている。
揺らぐ空を見上げるがヘリコプターのような飛翔体は確認できない、ならばどこだろう⁉ 一つ深呼吸をし落ち着いて考えた。
昔からここで暮らしている。 まるで鳥が上空から地上を見下ろすように、周辺の地図を脳内に描いていった。
「……! わかった。 この先の交差点で左に曲がって! 五十メートル先に、狭い路地があるの、そこに一旦避難して!」
「了解!」
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