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授業が終わり、帰りの準備をしていると突如として開かれる教室のドア。
そこから登場したのはお昼休みに一緒にご飯を食べた田村兄妹だった。
「お疲れ様諸君、しかし、冬だというのに学園というところはなぜ、こうも頭がぼんやりとするのだろうか」
「たぶん、暖房のせいだとおもいますけど」
理解しがたいやり取りを行いながら、二人はまっすぐにこちらに向かってくると、私を囲みながらニコニコと笑っている。
「あ、あの?。 なにか御用で?」
「何がって、お昼に話したとおり、帰りまで待っていたのさ」
瞳を輝かせながら会長が言う。 まさか本当に彼に会うために出向いてきたのだろうか?
しかし、そうとしか考えられない。 思考回路が読めなさ過ぎて自然と頬がひきつる。
「兄はやるときはやるので」
愛くるしい笑顔でいるが、なるほど、これが彼女の営業スマイルなのだろう。
本当の姿をしる人は少なく、猫を被っているという表現がこれほど似合う人物を私は知らない。
「ささ、愛くん、行こうか」
そう言って、スタスタと先に歩き出す会長の後ろを私は慌ててついてく。
その後ろを鮎子がついてくる。 先ほどから一言も喋っていないが、物事というものは不思議で、それでも進んでいく。
靴を履いて、階段をおりていくと同時に家の迎えの車が到着する。
なぜか凄く緊張してきた。
後部座席の扉が開き足の長い彼が顔を出した。
「おかえりなさいませお嬢様」
「うわぁ……。 なにこれ超イケメン」
隣で関心した声をだす彼女と打って変わって会長は、瞳を大きく開き頬を真っ赤に染めている。
それはまるで、話に聞く「恋する乙女」のようなそぶりであった。
「た、ただいま」
気まずい感じがして、目を逸らしながら挨拶を返した。
「おや? そちらのお二方はご学友様ですか?」
ニッコリと微笑みながらやさしい口調で問いかける。
「はぐぅ! なんつう破壊力! ま、眩しい直視できない」
いったい、彼女はどれだけのキャラをもっているだろうか、今朝から口調が常に変わっているように思えた。
そして会長はというと。
「ど、どうも! 愛さんと同じ生徒会の会長を務めております田村 白馬と申します! よろしくお願いいたします」
いつ、私が生徒会へ入ったのかわからないが、物凄い勢いでお辞儀をしたあと手を差し伸べている。
握手を求めているのだろうか? いきなりのことで困惑している蒲生さんだが、ちょっとだけ考えるとその手を握り返した。
「いつもお嬢様をありがとうございます。 これからもよろしくお願いします」
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