田村兄妹

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 次の日は、今までにないくらいに目覚めがよく。  起きてすぐに身支度が出来た。 顔もむくんでいない。 目の下のくまもなければ、お肌の調子もいいように思えた。    朝食はフレンチトーストに、ホットココアと温野菜のサラダで、爺が疲れている私を気遣って糖分の多い食事にしてくれたが、さすがに甘すぎるような気がした。  そして、彼は私との約束をきちんと守り、朝食時は来ないでいる。  今日も学園に向かうため、彼の案内で車に乗り込むと、ほどなくして校門が見えてくる。  しかし、今日はいつもより賑わっており、人だかりができていた。 「どうしたんですかね?」 「そうね。 いつもはもっと静かなのに」  蒲生さんの目つきが真剣になる。 もしかするとASHIANかもしれないと考えた彼は、運転手に一度スルーするように呼びかけようとしたとき、人ごみのなから手を振って私たちに合図をしてきた人がいた。 「え⁉ 会長と鮎子?」  満面の笑顔で手を振って挨拶してくれるのは、昨日の二人で私たちをまっているのだろう。  運転手がバックミラーで私たちを確認してくる。  蒲生さんは少し複雑な顔をしながら「停めてください」とだけ告げると、車は速度を落とし、いつもの停車位置にとまる。  なぜだろうか、ドアを開けるまえから疲れている。  むしろ、車のドアを開けたくないと思ったのは、これが初めてだ。  そして、窓の外には人ごみの中心にいた会長が瞳を輝かせ、出向いている。  覚悟を決めて、勢いよくドアを開けそうになるが蒲生さんはそれをやめさせた。 「お待ちください、私が先に外にでますので」  よくテレビとかでみるSPがドアを開けてくれるやつだろうか?  そして、今更になって気が付いたが集まっている人の割合が女性に偏っているのも気がかりだ。  彼は辺りを警戒しながらドアを開けると同時に、広がる黄色い声と携帯端末から発せられるフラッシュでいったい何がおきたのかと思った。 「うへぇ! 本当! 凄いカッコいい」 「ほほほほほ! 捗る! 捗る! 私の創作意欲が捗るわぁ!」  十人十色の反応をしているが、全体的に【カッコいい】が占めている。  まさか、彼の姿をみるためだけに学園の生徒は朝の貴重な時間を割いてまで、ここに集まったのだろうか?    
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