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そして、いよいよ会長たちが迎えにくる。
今まで騒いでいた人たちが一瞬静かになったのは、流石としかいいようがない。
「おはようございます。愛さんに蒲生さん」
最初に鮎子が声をかけてきてくれた。
私も急いで車から降りると、急いで挨拶を返した。
「お、おはようございます。会長に鮎子さん」
「おはようございます。昨日はどうも、どうか今日も一日お嬢様をよろしくお願いいたします」
蒲生さんが丁寧に挨拶を返すと、会長は緊張した面持ちのまま、まるで出来の悪いロボットが動いているような動きをしながら、歩いてくる。
「あが……。 お、おはようごじゃいます!」
顎がガクガクと震え、うまく発音できていない。
「はい、おはようございます。 本日もどうかお嬢様をよろしくお願いいたします」
笑顔を崩さず会長の挨拶にも応え――というよりも、彼が何か喋るたびに外野がうるさいのがとても気になる。
私は急いで車内へもどるように目線で合図をすると、軽く一礼し車に乗り込んだ。
「あぁー、行っちゃった」
「むふぅ! 私の脳裏に焼き付けたぁ! これはさっそく線画にしなければ!」
彼が去るのを確認すると、ゾロゾロと散っていく女子生徒たち。
まさか、これから毎日こうなるのではないだろうかと不安になってしまう。
私が不安になっていると、急に肩に手を置かれ振り向くと、そこには会長がいつも通りの顔に戻っており、サラサラの髪をかき上げながら私にウインクをしてきた。
「えぇっと……。 要するに、愛くん今日も元気そうだねってことだと思う」
鮎子が通訳をしてくれたが、全然伝わらない。
むしろ悪寒がするレベルであったが、必死に表情にでないようにしていた。
「これはこれは、愛くん、今日も相変わらず可憐だね。 それで提案なのだが早くこの生徒会へ入る書類にサインと捺印をお願いしたいのだけどいいかな?」
私は紙を受け取ると、四枚に切り刻みクシャクシャに丸めると鮎子に手渡した。
「ごめんなさい。 ちょっとよくわらなくて……」
そう言い残し教室を目指して早歩きで歩き始めた。
後ろからは、何かを言っている兄妹の話し声が聞こえくる。
「な、なぜだ⁉」
「は? 決まっているじゃん、兄さんがキモイからでしょ」
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