田村兄妹

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 美味しい感動を皆で分け合い、壁にかけられている時計を確認すると、背筋が凍りそうな感覚をうけた。  蒲生さんとの約束の時間は過ぎ、慌てて連絡しようとするが鞄から取り出した携帯端末の充電が無くなり、連絡がとれない状況になっている。  しかたがないので、鮎子の携帯端末を借りて家に電話をすると、安堵した声色で「伝えておきます」と告げられた。  なにか罪滅ぼしはできないものかと、お店のたい焼きを数個持ち帰ることにした。   「へぇ、五色さんみたいな人でも忘れることあるんだ」  私を過大評価しすぎていますが、 忘れもしますし、失敗だって人一倍してきた自信がある。  それでも、この時間はとても有意義で楽しいと感じた。  周りで談笑しながら、出来立てのたい焼きを抱えて帰路につく。  夕日が沈みかけ、いよいよ寒さが増してきている。  帰ったら初めに謝ろう。 そもそもGPSとかの機能はこのペンダントについていないのだろうか?  でも、四六時中監視されているのも、なんだか嫌になるがそんなところを気遣ってくれたのだろうか?  そんなことを考えていると、前を歩く鮎子が立ち止まり何かを言っている。 「やっば! ちょっと、なによあれ⁉」  隣の会長も鮎子が見つめる先をみて、顔を真っ青にさせた。 「おいおい! これはちょっとまずいかも!? 全員逃げろぉ‼」  二人が勢いよく振り返るなり、私と速水さんの腕を掴むなり来た道を戻りだしていく。   「ちょ、ちょっと! どうしたんだ⁉」  速水さんが鮎子の手を振りほどいて走り出した。   綺麗なフォームに上下に揺れる豊かな胸部に自然と目がいってしまう。   「な、なにって、後ろみてみなさいよ!」  会長に手を繋がれながら、後ろを少しみるといつぞや家の周りを取り囲んだ改造車や改造バイクの集団が私たちを目指して走ってきている。   「あれって!」 「うむ、間違いなくASHINAの下っ端だな!」  白銀会長が変な顔で走りながら説明してくれる。  きっと私を狙ってきたに違いない、ならばこの人たちは関係ないのだから。  そう思って手を解こうとしたとき、全員が信じられない発言をした。    
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