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雪どけに咲く花は黄色
あの真冬の突発的な襲撃以降、ASHINAは息をひそめている。
そもそも、私の心構えが以前にも増してしっかりしているのもあるかもしれないが、なにも悪いことばかりではない。
「おはよー愛」
「あ、おはようございます栞奈」
あの襲撃の後に一人現場に戻り警察の到着を待って事情を説明してくれたらしいが、きいたところによると、だいぶ襲ってきた人たちの罪状が重くなっていた。
いったい何を警察に伝えたのかは本人からは聞いていない。
それでも、日々部活が忙しくない期間はよく私と接してくれ、今では学園で一番の仲の良い友人として過ごしている。
それには鮎子も加わり、納得できないが生徒会の書記として活動も行っていた。
この学園は生徒会長は生徒の投票で決められるが、その他の役職に関しては生徒会長が決める。
鮎子も本来は書記であったが、今まで二人で活動してきたため、様々な役職を兼任していた。
今は雑務は私たちで分けておこなっているので、随分と楽になったと教えてくれた。
「いやー、早いもんだね。 もう少しで一番上の学年だよ。 私ってばずっとボールと一緒な想い出しかないんだけど」
憂鬱そうに私の机に伏しながら今後を憂いている。
気が付けば早い。 本当に早い。 ついこの間までの私はいったい何をしていたのだろうか?
「私だって、まさか生徒会に入るなんて思ってもいなかったけど、なぜか知らないうちに手伝ってて……」
軽いため息に対し、栞奈は笑うと自分の席へと戻っていく。
白馬会長は今年で卒業の予定で、本来は新生徒会の選挙が行われるはずなのだが、その報せは一切私たちに届いていないうえに、卒業の準備に忙しいはずなのに、全然行動に現れていない。
むしろ、今まで以上に強固な基盤を学園内に築きつつある。
留年した場合通常は降板するのが普通であるが、彼なら何かしら仕掛けている可能性が高い。
それでも、学年末テストの成績を見ても留年する点数とは思えない。
むしろ学年でもトップクラスだろう。
彼が何を考えているのかわからないが、今は目の前のことに集中していく。
そして、雪が溶けはじめ太陽の光が心地よくなりつつある季節になり、生徒会室で掃除をしていた私たちに会長が唐突に話しかけてきた。
「諸君! 私の提案による名案があるのだが、拒否権は一切ない! 必ず参加するように」
テーブルを拭き終わり艶と汚れ防止のために、家具用ワックスを塗布しているときだった。
私と鮎子が嫌そうな顔を向けて会長を見つめると、ドヤ顔で語り始める。
「せっかく天気が良いのだ。 今週の週末に遊びにいくぞ!」
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