甘酸っぱい未熟な果実

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「先輩って、黒田先輩と友達ですよね?」 「……うん」 「黒田先輩って今お付き合いしている人がいるって本当ですか?」 「……まあ、そんな感じの人はいるらしいけど……。それがどうしたの?」 「いえ、ただ、気になっていたものですから」 「そう。それだけ?」  顔をしかめながら美波はレスポールをもう一度肩にかけた。 「それだけなら練習の続きしたいから、もういいかな?」  美波はぶっきらぼうに告げると愛斗から視線を外した。美波は愛斗の恋愛事情を察している。だけど、これ以上、翔悟の立場が悪くなるようなことを言いたくなかった。美波はギターのネックを見下ろすと、愛斗は美波の近くに来て、はらはらと涙を流し出した。 「どうした? なんかあったのか?」  美波は自分のスカートからハンカチを取り出そうとするが、お構いなしに愛斗は顔を手で覆い、声を噛み殺しながら嗚咽を上げる。  美波は自分より大きい愛斗の丸まった背中を優しくさすった。愛斗は大粒の涙をいくつか流したあと、喉の奥から必死に言葉を紡いだ。 「僕、黒田先輩に憧れているんです。お二人は仲がいいし、相談するのにはいいかなと思って。僕、入学してお二人を見かけてから、ずっと僕はお二人を見てきました。合唱部に入って、黒田先輩がピアノを弾いていて。僕はそれだけで十分だったんです。うちの学校のカリスマ的な存在のお二人の近くにいるだけで、それでよかったんです。でも先週、黒田先輩が告白されているところを見てしまったんです。黒田先輩はいつも食堂でお昼をします。だから僕も食堂でお昼をしているんです。そうしたら先週、先週……。僕と同じクラスの男が……。黒田先輩に、告白、していたんです……」
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