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私の街には、御渡祭というお祭りがある。
冬に行われるお祭りで、基本的には夏祭り
などの普通のお祭りと変わらない。
ただひとつ特殊な点があるとしたら、
この街の住人は12歳になると必ずこのお祭
りに参加して、神社に参らなければいけない
ことだ。
神社というのは御渡祭が行われる場所に
ある古びた神社のことで、名を行連神社と
いう。読みづらいが、ゆきつれ、と読む
らしい。
「いい?ハル。行連神社に行ったら、すぐ
お参りして帰ってきてね。誰に話しかけられ
ても返事しちゃダメだからね。」
「わかってるよ。」
心配するお母さんをなだめ、神社へと
続く参道を見据える。
先月、私は12歳になった。つまり、この
お祭りに参加しなければいけない。参道は
薄暗く、左右にたつ石灯籠でようやく少し
見えるかな、という暗さだった。
「行ってくるねー。あ、リンゴ飴とかき氷
買っといてね!レモンのやつ!」
「わかったから、早く行きなさい。誰に
話しかけられても、ついていったらダメ
だからね!」
「はーい。」
心配する声を背に、足早く参道を歩く。
確か真ん中は神様の通り道らしいから、端に
寄って進む。
「もう12歳なんだから、不審者について
いくわけないじゃん。心配性だな。」
鳥居を越えたところで、家で両親に何度も
言われたことを思い出す。
誰にもついていったらいけない。
声をかけられても振り向いてはいけない。
お参りは丁寧にしなければならない。
冷たいところにいってはならない。
この4つを、耳にタコができるほど
言われたのだ。3つめまではともかく、
4つめのこれはどういうことなのだろう。
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