冬のお祭り

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 神社につくと、既に他の子達はお参りを 済ませていた。出店を吟味していた分、 出遅れてしまったのだろう。  「あ…。」  そのうちの一人がこちらに気づき、今から お参りかと聞くようなジェスチャーをする。 返事をしないための配慮だ。  そうだよ、とジェスチャーを返せば、 その子はオッケーと指を丸め、手を振って 行ってしまった。  拝殿につくと、賽銭をして二礼二拍手。 自分しかいないせいかやけに響き渡る柏手に 若干驚いてから目を閉じる。  普通神社で祈ることと言えば、神様への 感謝だ。しかしこの御渡祭では祈る事柄が 決められている。親からは何度も自分の願い を言っていいんだよと言われたが、決まりは 守るべきだと思う。  なんとなく不穏な言葉だが、とりあえず 覚えた言葉を脳内で復唱する。  “ゆきこし、ゆきこし、おいでください。 ゆきこし、ゆきこし、ごらんください。 おきにめしたらおかくしください。 おきにめさずばおかえしください。”  唱え終わって目を開ける。  すると目を開けて焦点が合うまでの一瞬、 一際ひんやりとした風が吹いた気がした。  「寒っ…!」  ぱっと目を開ける。すると、その光景は 先程と比べがらりと変わっていた。
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