7人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
白い。
最初の感想はそれだった。
さっきまで暖かな火を灯していた石灯籠、
古びて黒ずんでいた拝殿の柱、賽銭箱、
今自分がたっている石畳。
全部が、透き通るように白い。そして。
『やぁ、こんばんは。迎えに来たよ。
君の名前は?』
目の前に、この世の者とは思えないくらい
美しい人が立っていた。
「………っ!」
答えちゃいけない。咄嗟に口を塞いで
首を振る。突然のことで頭が働かないが、
これが人間じゃないことだけはわかる。
『ねぇ、教えてよ。君の名前は?私を
呼んだのは君だろう?』
「~~~~っ!!」
手を伸ばされ、思わず踵を返して逃げた。
一瞬だけ触れた指先はとても冷たくて、
体の芯までが凍りそうなほどだった。
縺れる足を必死に動かして、もと来た道を
全速力でたどり始める。
最初のコメントを投稿しよう!