01 庸介という男

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 仲谷の質問は、段々と露骨なアプローチになりつつある。慎は苦笑いして、視線を上げた。 「この間連れてた彼女は、線が細くて目元のパッチリした美人だったような気がするけど?」 「好みの女と、好みの男は違うんで」  もう正体を隠す気すら無いらしい。  喉の奥でくつくつと笑っていると、仲谷は慎の後頭部の辺りに手鏡を近づけた。あらかたカットを終えたようだ。  改めてヘアスタイルを確認する。鏡に映った慎は、無難なビジネスショートヘアから、さらにさっぱりとしたスポーティな短髪になっていた。 「どう?」 「こんなに短いの、久しぶりかも。なんだか襟足がスースーするよ」 「これから暑くなるし、丁度いいじゃん。やっぱり頭の形が綺麗だから、ベリーショートが似合うなあ」  そう言って、仲谷は慎の髪を撫でる。襟足から後頭部、それから頭のてっぺんまで。短くなった毛足に手のひらがジョリジョリと引っかかって、悪寒にも似た妙な心地がした。 「スゲーいいよ……峯村さん、めちゃくちゃオレのタイプだ」  鏡越しに視線を絡ませながら、仲谷はうっとりと掠れた声で囁いた。  その押しの一言があまりに直球すぎて、慎は赤くなりながら「どうも」と曖昧に答えた。
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