01 庸介という男

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 慎も庸介の背に腕を回し、Tシャツの下のガッチリとした筋肉の感触を確かめるように、手のひらを滑らせる。久しぶりに感じる、他人の温もりだった。  体を密着させたまま、庸介の両手が慎の頬を包み込むように挟む。  数週間前から、慎に何度も妖しく熱い視線を送ってきたその目が、すぐ目の前にあった。いつも刺すような鋭さだと感じていた。しかしこうして間近で見ると、その視線は思いのほか柔らかく、優しい。  まぶたを閉じる。それを合図に、唇と唇が重なった。  厚みのある唇を啄み、啄まれながら、体をさらに密着させる。熱く猛った股間が擦れ合って、慎は体の奥にじんと甘い疼きが生じるのを感じた。 「部屋に来い」と言われたのだから、このキスの続きは庸介の部屋ですることになるのだろう。気持ちの上では、このままこの場で庸介の体にむしゃぶりつきたくて堪らなくなっているのだが。  慎は舌を受け入れようと、薄く口を開いた。すると庸介は、何か思い立ったかのように急に唇を離し、慎を見つめた。 「……待って」 「?」 「大事なこと、先に言わせてほしい」  その表情の真剣さに、慎はキョトンとしながら濡れた唇を手の甲で拭いた。  庸介はごくんと空気を飲み込んでから、慎の両肩を掴み、緊張した声で 「遊びとかじゃなくて、オレ、慎君と真面目に付き合いたいって思ってるから」  と言い切った。  数秒遅れて、慎は目を丸くする。 「……えっ?」 「慎君、オレと付き合ってくれ。オレ、もっともっと慎君のこと知りたいし、慎君にもオレを知ってほしいんだ」  それは紛れもなく、愛の告白だった。しかも青臭いほどにピュアで真っ直ぐな――
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