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初めて庸介に会った時に感じた、『チャラそう』という印象が、慎の中でグラグラと揺れた。きっとコイツは乾く暇もなく、女と男の間を行ったり来たりしているんだろう――そう思っていた。そんな男が、自分に真剣に交際を申し込み、目を潤ませながら返事を待っているのだ。
「……待ってよ」
「うん?」
「それ、本気ってこと? 本当に?」
「そうだよ。冗談言ってるように見える?」
慎は困惑の溜息をつきながら、肩に置かれた手を掴んで下に降ろした。その反応を見て、庸介は不安に駆られたようだ。シュンと眉尻を下げながら、慎の表情を窺っている。
慎は頬を掻きながら、おずおずと尋ねた。
「その……彼女と別れたって言ってたけど、その話、本当に本当なのか?」
「え? うん」
「付き合うって、都合のいい男の浮気相手探してる……とかじゃなくて?」
真っ先にそんな事を気にしてしまうのには、実は慎なりの理由があった。しかしそんな事情など、庸介は知る由もないのだ。慎の言葉を聞くなり、庸介は素直に不快感を露わにする。
「なにそれ? 失礼しちゃうなー。っていうか、慎君もこの前見たでしょ? 彼女とはオレ、だいぶ前からうまくいってなかったんだよ。フリーになったから、こうして慎君に声かけてんじゃん」
「……」
慎はもう一度溜息をついた。どうやら庸介の気持ちは本物らしいということに気付いたからだった。
「のこのこ誘いに乗っておいて悪いけど、付き合うとかそういう話になるんなら、俺はバイの男はお断りだ」
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