*03 Tomcat〈雄猫〉

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「あー、やっぱりそうなんだ。我ながらすごい洞察眼」 「……」 「慎ちゃん、昔はあんまり遊ばないタイプだったのに。真面目な交際はもう諦めちゃってるワケ?」 「いいだろ別に……色々あるんだよ」 「へー、あっそ。じゃ、僕にもサクッと遊びのチューしてくれないかなぁ」  そう言って、ユウタは目を閉じ、わざとらしく口を尖らせる。  ユウタは昔から、慎をからかうような冗談が好きなのだ。  まったく、いい趣味をしている――慎は口の中で小さく舌打ちをしてから、周囲をキョロキョロと見渡し、素早くユウタの頬にチュッとキスを落とした。  すると、自分からキスを求めたにもかかわらず、ユウタは大げさな程後ろに仰け反り、目を丸くした。唇のすぐ横のあたりを押さえて、慎を見つめるその顔が、ぶわっと赤く上気する。 「ちょっ……な、何ホントにしちゃってんの?!」 「えっ、だってユウタが――」 「冗談に決まってんじゃん! 冗談!」  ユウタは怒ったような表情で、早足で歩き出した。それを慌てて追いかけ、隣りに並ぶ。  額に汗を浮かべる慎の方を見もせずに、ユウタはぶつぶつとぼやきだす。 「なーんか調子狂うなあ」 「ご、ごめん」 「すっかり遊び人気取っちゃって、似合ってないっつーのよ。慎ちゃんは根が真面目なんだからさ!」  どうやら慎のリアクションは、ユウタが求めていたものとは違ったらしい。慎は急に恥ずかしい気分になり、肩を落とした。  ――遊び人、か。  ぼんやりと、ユウタの言ったその言葉を頭の中で反芻(はんすう)した。  いっそ自分は、始めから薄情で尻の軽い人間だったんだと、開き直ってしまえたら楽なのかもしれない。  これからの人生についても、あれからずっと続いている、庸介との曖昧な関係についても――
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