その背を照らす夕陽は赤く

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  そこは赤い夕陽が美しい、長く続いた堤防の道―――  静かに流れる河の水面(みなも)は鏡のようで、対岸の堤防の向こう、細い煙突が幾つか突き出る、ささやかな工場街に沈む太陽を映し、まばゆく輝いていた。  そんな堤防の道をランドセルを背に、手を繋いで歩く男の子と女の子。  まだ幼く、後ろからランドセルに羽交い絞めにされているようにも見える、二人の頬は夕陽の光に一層赤い。  土手を覆う草原が、秋の風にさぁっと波打ち、ススキの穂の先にとまっていた赤とんぼ達が、驚いて空に舞い上がった。立ち止まった男の子と女の子は、頭の上の空で風に乗る赤とんぼ達を見上げ、笑顔を零す。  空に遊ぶ赤とんぼ達のさらに上、うっすらと白く浮かんだ月が、今夜は満月である事を予告していた。その月を横切る二羽のカラスの呼び合う声…遠くの鉄橋を渡る電車の音………  秋風に紛れた冬の微粒子に、男の子がくしゃみをすると、女の子はびっくりした目で男の子を振り向く。  そして男の子と女の子は手を繋いだまま、どちらからともなく駆け出した。二人の無邪気な笑い声が上がる。ただ楽しいから笑う、他に理由は必要ない。  澄み渡る夕映えの中、ねぐらに帰る二羽のカラスのあとを追うように、男の子と女の子は堤防の道を急いで行った………  
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