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「…あのさ、うちの旦那。
付き合ってふた月でプロポーズするようなお調子者だけど、男の間ではけっこう愛されキャラでさ。
男友達いっぱいいるのね。
結婚式の配席、チヒロの周り、イケメンだらけにしとくから。
だからね、次いこ。さっさと次いって、あのバカのことは、忘れよう!」
力強く言うサユミ。
だけど私は…
「あっはっは…。
…ありがと。
サユミの気持ち、嬉しいや。
でも…当分“次”はいいかなぁ。今、さすがにそういう気分には_____」
力なく笑うと、
ドンッ。
サユミが突然、テーブルを叩いた。
突然で驚いたが、彼女のあまりに必死な様子に、つい怯む。
「チヒロぉ、そんなのダメだよ。塞ぎこんだら、せっかくのいい女が台無しだよぉ。
失恋はね、よりヒトとして美しく、成長させるためにあるの!
別れはね、新しい出会いのためにあるの!
このかき氷にだってね。
高本との別れがなくちゃ、出会えなかったんだよ~~」
そう言って、私以上にオンオン泣き出したサユミ。
「アハハハハ、ちょっとサユミ、マジ泣きしないの。
皆見てるよ、恥ずかしいったらもー…」
嗜めながらも、私は思わず大きな声で笑ってしまった。
笑いながら、目尻にたまった涙を拭いて、可愛らしいピンクの小山の頂上に、スプーンを入れる。
シャリッ。
いつまでも溶けない氷は、最初、ちょっとしょっぱい味がして。
そのあとじわっと優しい甘さが、私の心を満たしていった。
《おわり》
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