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「うん。
行こう、行っちゃお!
これからはどんどん。あのさ私、まだ行きたいとこいっぱいあんのよ。
タピオカに、焼きアイスに、それからえーっと…」
「あっは…甘いものばっかり。
サユミってば。
そんなに食べたらウェディングドレスがぱんぱんになっちゃうよ」
「あ~…、そっか。で、でもさ、式はまだ2ヶ月も先だから」
「ふふっ。あーあ。
…サユミも結婚しちゃったら、もうこうやって休日会うことも、難しくなっちゃうな。
私、ちょっと寂しーかも…」
チヒロはぎゅうっと私の肩を掴んだ。
椅子から半立ちになって、私に迫る。
「行くよ!
チヒロに呼ばれたら、飛んで行く!
旦那なんか放ったらかしとく!」
「も~、ダメだよそれじゃ。
サユミが離婚しちゃったら、私責任感じるもん」
「そ、そんなのは大丈夫っ……
でもないか、やっぱり」
シャリ…
彼女はカラフルなアラレをちりばめた氷の一角を、漠然と崩した。
サユミは、2ヶ月後に結婚式を挙げる予定だ。
お相手は、半年前に合コンで知り合った男。
『結婚しまーす』
だなんて、いきなりの電撃発表で、会社のみんなが驚いた。
『まさか先越されるなんてなー』
なんて、1ヶ月前には彼に笑って話したものだった。
目の前の氷が、じんわりと滲んでゆく。
それを不思議な気持ちで眺めていると、
「ねえ」
サユミがふと、真面目な声を出した。
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