1 瀕死、そして出会い

7/9
前へ
/12ページ
次へ
「んっ!」 女は声を上げたが、それは驚きによるもののはずだった。俺に、人を痛めつける趣味はない。吸血鬼の牙は基本、相手に痛みを与えないようにできている。…もちろん、あーゆー趣味の奴はわざと痛みを与えるらしいが。ふわりふわりと、俺の鼻腔が花で満たされる。うまい。 やはりうまい。 こんなうまい血を目の前に、理性を保つ方が無理だっての。心の中で言い訳しながら、俺はなかなか吸血行動をやめられなかった。 もうやめろ。心の何処かからそんな声が聞こえる。わーったよ。俺はそっと、首筋から離れた。目が覚めている間なら、俺は色々コントロールできる。今はしっかりと目が覚めていたようで、女の首筋には痕が残っていなかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加