1 瀕死、そして出会い

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「…大丈夫か?」 吸いすぎたか?少し上機嫌な俺は女の顔を見た。 「終わりましたか?」 幸い、貧血にはなっていないようだ。受け答えもはっきりしている。 「ああ。すまないな。」 女は首を振った。 「いえ。それより、痛くないんですね」 びっくりしたような顔で言う女に上機嫌な俺は微笑んでみる。 「俺は痛いの、嫌いだからな」 「貴方が優しくて良かったです」 のほほんとした顔で女は言った。 「そういえば、どちら様でしょうか」 え。今更。真面目な顔をしている女の前ではそう言うわけにもいかず、 「ただのヴァンパイアだよ」 「いや、名前教えてください」 女にそう言われて、俺は少し黙った。 人間の名を名乗るか。本当(ヴァンパイア)の名をいうか。 俺は結局人間の名を名乗った。
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