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第二章 帝都
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少し泣きたいような、だけどさっぱりした気持ちで目が覚めた。
ぼくの頭は、ひなたくさいごわごわした毛のなかに埋もれていた。
静かに上下するお腹の先には、行儀よく目を瞑ったシイタケの頭があって、その先には、黒いフリルといちご色の髪。
ホッとして、あたたかい気持ちになる。
昨日会ったばかりで、決して愛想がいいとはいえないし、しかも人形だけど、ぼくはストロベリに親しみを感じていた。
彼女は壁に背をもたせかけ、足を投げ出した人形らしい姿勢で、夜を明かしたようだ。
ぼくが目を覚ましたことに気づいたのか、彼女のどこかで、カチリと音がした。
くるくると巻いた髪が揺れて、瞼が開き、ソーダ色の瞳があらわれる。
「おはよう」
ぼくが話しかけると、ストロベリの顔がきりきりとこちらを向いた。
「おはようございます、踊・ティカ」
そう言って、唇の両端をくにゅんと上げた。
人間とは違う表情の作り方にも、慣れてきた。よく見ると、これはこれで魅力的だ。
シイタケも目を開け、耳をピンと立てて頭を上げる。
ぼくは、あたりを見回した。
朝日のさすだだっ広い大部屋は、6割がた人で埋まっている。
年齢はさまざまで、何人かで固まっているグループもある。
みんな、どういう人なんだろう。
ぼくが育った集落では、毎日の暮らしといえば、水を汲み、生産モジュールで合成食料を作り、それをときどき行商人の持ってくる食料と交換したり、逆に街へ売りに行ったり、あとはお祭りのために歌や演奏や踊りの練習をする、その繰り返しだった。
帝都では、みんな毎日、何をして過ごしているのだろう。
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