第9校

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

第9校

「じゃあ全員揃ったということなので、これから新聞部と文芸部の新入生歓迎会をしようと思います!」  部室の半分、新聞部のエリアに集まった両部の部員に、新聞部の部長がいつもより張り切った感じで話す。 「じゃあ最初に自己紹介をしたいと思います。ゴホン、じゃあ一番手は僕から。えー、新聞部部長で二年文系の地頭方太平です。好きな教科は国語、嫌いな教科は数学。部に入った理由は写真部が無かったから。趣味は写真を撮ること。休日はよく、旅好きの副部長に付いて行って、色々な写真を撮っています。ということでよろしくお願いします」  こんな具合で、二年生から一年生の順に八人全員が自己紹介をした。ここでその全てを説明すると少々長いので、短くまとめると、大谷先輩は、地図好きが転じて旅行好きに。地理を学びたいがために理系を選択。  文芸部部長の丸山先輩(性別は男)は学年一の秀才。  柏座陽奈はここの旧校舎が気に入って新聞部に。  平方夏帆は本物の新聞みたいで憧れたから。  ……等々である。かくいう俺とアキも無難に自己紹介をすることができた。ただ問題は最後に自己紹介をした、向山涼だった。途中までは普通だったので油断をしていたが、最後に爆弾を抱えていた。 「……あっ、そういえばさっき、俺と古敷谷が昔からの親友と言いましたが、それ以前に古敷谷と今泉さんは幼なじみでして……二人のこと、温かい目で見守ってください」  なんてニッコリと笑いながら言った。全くとんでもない爆弾だ。ほら、みんなからの好奇の目が俺とアキの方へ……まあ、アキは特に何も気にしていないようだが——。 「先輩……一応全員の自己紹介が終わりましたよ……」  俺がそう言うと、新聞部部長——地頭方先輩はハッとした顔になった。 「ああ……そうだった、そうだった。えっと、自己紹介が終わったところで、じゃあ乾杯と行きますか」  そう言うと、先ほど渡されたジュースの入った紙コップを全員が持った。 「乾杯」 「カンパーイ」  掛け声とともに乾杯をすると、机の上に広げられたお菓子を食べたり、誰かと話したりしている。  そんなガヤガヤとした雰囲気の中、俺がポテトチップスを黙々と食べていると、肩をトントンと叩かれた。誰かと思ってみるとそこにはメガネ娘、柏座陽奈がいた。 「えっと、何でしょうか?」  すると柏座は顔を近づけて小さな声で訊いてきた。 「あの……さっきの話って本当なんですか?」 「さっきのって?」 「貴方と今泉さんが付き合っているって話です」 「……付き合ってない」 「ええ! そうなんですか……。じゃあ何処までのご関係ですか?」 「ごく普通の幼なじみだよ……ていうかめっちゃ食いついてくるな……」 「それが新聞部員の本性ですから」 「そうか、じゃあしょうがない……ってなるかぁ!」  すると柏座は、テヘッとした顔をする。   「まあそうですね。で、実際今泉さんのことはどう思っているんですか?」    懲りずに訊いてきた。だが、そろそろ面倒にも感じてきたので、 「ああ、まあ……好きだな」  と話した。すると柏座はそれを訊いて少し顔を赤らめた。 「いや、なんで柏座が顔を赤らめるんだよ」 「だってですね。幼なじみの恋愛って素敵すぎて……よし、私決めました」 「……何を?」 「それはもちろん、貴方と今泉さんの恋愛を全面的にサポートすることです」 ——不安だ。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!