楽シミ

記憶は人を…

…は？なんで？僕は辺りを見回した。すると3メートルほど先に、女がいることに気づいた。誰だよ、邪魔しないでくれる？僕はイライラしながらも、その女のところへ向かった。

女は、隣に住む独身の若者だった。

…なんで隣人がこんなところに？
隣人の表情は暗くてよくわからない。

「貴方もただの人間か」

隣人はそう言いながら何かを取り出す。暗くて俺には見えなかった。
危険だ。この女から、そういう匂いがする。僕の体が動くより先に、女の体が動いた。体に走る、鈍い衝撃。

意識がフェードアウトするとき、初めて女の表情が見えた。笑みをたたえたその顔には、目には、赤い何かが見えた。僕が鏡を見たとき、瞳の中に見えるそれと、同じものだった。

狂気。人はそう呼ぶ。