さとがえり

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「何て呼べばいいかな?」 「みーちゃんってみんなは呼んでた」  多少たどたどしさはあるものの、思いのほかしっかりとした返事が返ってくる。 「そう、じゃあ、みーちゃん。みーちゃんはどうしてこの家にいるの?」 「どうしてって、どうして?」  みーちゃんは大げさに首をかしげる。その様子に嘘っぽさはなく、目をそらすようなそぶりもない。時折、フッと風の音や鳥の声がすれば外に目をやるがそれ以外はじっとこちらを見ているので、ともすればこっちの方が目をそらしたくなる。 「僕は、ここにはおばあちゃんしかいないと思ってたから」  僕はお茶をそっと一口飲む。熱すぎないのを確かめてからもう一口。家のお茶とは種類が違う。でも、少し冷静になれるような気がする。 「そうなの? ここにはたくさんいろいろいるのに?」  みーちゃんはそういった後、少しだけ目を伏せる。たくさんいる? 何がだろう。普段だったら幽霊の類だと思うだろう。でも、みーちゃんは幽霊ではない。  じゃあ、居るのは何なんだろう。 「ううん、ちがうね。たぶん、おばあちゃんだけしかいなかったよ。あなたが戻って来るまで」  みーちゃんはそう訂正するが、わけのわからなさが増しただけだ。特に他に心当たりもないので僕は質問を変えることにした。 「君はどうしてここに来たの? 最初に見たときはアーケードにいたよね」 「うーん……わかんない。わかんないけど、ここが好き」  僕は小さく溜め息をつく。 「そう」  ここが好きだと言われてしまっては僕には追い出す理由がなかった。特に悪事を働いてるわけでもない。かといってこれではなにもわからないままだ。僕は更になにか聞くべきか悩んで、やめた。みーちゃんのコップは空になっていた。
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