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四日目
みーちゃんを連れて買い物に出た。単純に冷蔵庫の中身が減ってきたのもあるが、街の人にみーちゃんが見えるのか確認したかったのも一つ、理由だった。
案の定というべきか、みーちゃんには誰も見向きもしなかった。ぶつかった、と思ったときでさえ相手が驚きも謝りもしないのはきっとそういうことだった。
だから、両手にレジ袋を抱えて歩く帰り道で
「戻ってきてたんですねー。可愛らしいお供もつれて、お買い物帰りでしょうかー?」
とのんびりした声をかけられたときはびっくりした。
辺りに僕以外の人はおらず、犬や猫も見当たらなかった。
「うん。まあ、買い物帰りだよ。しおんちゃん……だよね?」
「はいー。お久しぶりですー湖原さん」
しおんちゃんとはお隣さんだった。二つか三つ年下で、小学校にはよく一緒に通っていた。今は記憶違いでなければ高校生、だろう。
「あの、みーちゃんのこと、見えるの? 他の人には見えないみたいなんだけど」
「んー……そうですねー。見える人は少ないでしょうねー。
でも、大丈夫。それ自体は悪いものではありませんし」
しおんちゃんは微笑む。そしてみーちゃんの頭を軽く撫でながら続ける。
「幸運なんだと思いますよー」
それって、どういう……そう、聞こうとしたときにしおんちゃんを呼ぶ声がした。
「すみませんー、お客様がついてしまったみたいです。まあ、なにはともあれ、お元気そうでよかったですー」
「あ、うん。しおんちゃんも元気みたいでよかったよ」
ではーといって、しおんちゃんが門の方に走っていく背中を僕は見送る。
みーちゃんの頭を軽く撫でると、みーちゃんはふふーと間の抜けた笑い声をあげた。
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