時の記念日

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里桜は15時の退勤時間が近づくと 病室を周り、何か困っている患者さんが いないか様子を伺うという。 今日もいつものように回っていると 何かを言っているように 感じた患者の近くへと行って 声を聞き取ろうと耳を近づけた。 その時に〝グイッ〟っと 衝撃があり後ろに引っ張られて... あまりに一瞬のことで 何が起こったのか分からないのと いきなり体制を崩し 踏ん張ろうとして膝を少し捻ってしまい 脚の痛みと引っ張られていることで ナースコールにも手が届かなかったと言った。 ターミナルケアのその患者は強い鎮痛剤を 使用していて無意識に里桜の一本に束ねていた髪を掴んでしまったらしい。 少し時間が経って何とか状況が わかった里桜は、そのまま誰かが来るのを 待っていた。 大声を出したり、騒ぐと患者さんが パニックになってしまうといけないから… 信じられない そんなことになってたなんて... 『里桜…、脚は大丈夫か…?』 『うん、湿布を貼ったから… 大丈夫。』 里桜の頭を撫でると 俺を見上げて微笑んでくれた。 どうすることも出来ず病室で そのまま30分くらい待っていると まだ帰っていないことに 気付いた職員さんが探してくれて 里桜を見つけて驚き 髪を掴んでいる手を離そうとした… ただ、その動きに反応した患者は 更に強く力が入ってしまって 職員さんがナースコールで 人を呼んで大事になってしまったとーー。
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