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何人かが集まってきて騒然となり
どうにか患者の手を緩めようと
騒げば騒ぐほどギュッと力が入る。
サキから昔聞いたことがある
介護の現場は患者からの暴力で
怪我をすることも少なくないらしい。
認知症の高齢者の中には
いきなり若い時のように手が出たり
高齢でも体に問題が無ければ
特に男性の力は物凄いものだという。
里桜は痛さと怖さで
胸の鼓動が早くなっていって…
そして、里桜の限界と
患者さんの強ばった体のことも思い
〝髪を切って下さいっ!〟
とお願いをしたと言った。
周りの人は
〝そんなことは...できない... 〟
と言ったらしいが
里桜はそうするしかないと判断をした。
里桜の髪は、
あの4年前に一度切ってからは
整えながらもずっと伸ばしていて
今はストレートのロングへア。
サラサラで茶色がかった綺麗な髪は
腰の少し上くらいまで長かった...
細くて直毛の髪は一本に
束ねると動くたびにキレイに揺れて
パタパタと家事をする度に
一緒に揺れるのを見るのが好きだった。
〝切って下さいっ、一気にお願いしますっ!〟
と言った里桜の決意を汲んで
大きなハサミで患者の手を切らない
ギリギリで本当に一気に切ってもらったと...
その時の話をする里桜を
引き寄せてギューッと強く抱きしめた。
『里桜...、怖かったろ?ショックだっただろ... あぁ...、傍にいれなくてごめんな?』
何度も背中を擦り頭を撫でる。
『なんで...、絋は謝らないで?仕事中のことだもん。私が悪いんだよ...、看護師じゃないからって油断してた。きちんと上に一つにまとめていなかったから...』
髪を切られたときの
里桜の気持ちを思うとやりきれないーー。
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