嫉妬

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 将来の夢は、漫画家になることだった。  小学生の頃に読んだ青春漫画に衝撃を受けて、その日から広告の裏に下手くそな四コマ漫画を描き始めた。  頭の中には鮮明にストーリーが浮かんでいて、キャラクター達の像もしっかりしている自信がある。  これはなかなかいい話ではないかと思うのだが、私はその想像を書き出すことが出来ない。  小学校で毎年行われる絵画大会では一度も入賞したことがなかったし、絵しりとりをすればみんなに笑われる。  今に見てろよと指先に力が入った。机の上には努力の残骸。  卒業するまでに一度も賞状を受け取ることはなかった。  「努力すれば夢は必ず叶う」なんて色んな人が言うものだから単純な私は信じてしまっていた。  私の絵を見ても誰も馬鹿にしなくなる、認めてくれるようになる。  でもそんな奇跡みたいなことは起こらなくて、人前で絵を描けば笑われ続けた。  夢を叶えれる人はほんの少しでもセンスと才能がある人だったのだ。  私は持ち合わせていなかった、ただそれだけのこと。  そのことに気づいた小学六年の冬、私の世界から色が消えた。
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