七月二十七日(土)

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 浅いプールで水慣れした後に向かったのは、ここの目玉スポットである、通称・波立つプール。絶え間なく発生する造波によって、実際に海にいるような体験ができる。 「おおー、すげえ! 面白え!」  笑顔の航大が波に揺られる。  子どもみたい。  夏休み前の私なら、そう思うことだろう。実際に口に出しているかもしれない。  でもそう思わないのは、航大に対して、私の中で「関係」以外の何かしらが変化しているからであって。 「あっ、七波っ」  航大の声に気づいたと同時に、背後から誰かがぶつかってきたような感覚を覚えた。 「わっ」  人気スポットなゆえ、仕方がない。揺れる波に対応できていない人がほとんどなのだろう。人と人がぶつかることなんて、こういう場所ではよくあることだ。  それだけなら、よかった。 「ご、ごめん!」  押された反動で、航大の鎖骨に唇をつけてしまったのである。  恥ずかしい。どうしてこうなった。  濡れた手で鎖骨をこすり、洗い流しているつもりでいると、「なんでだよ」とツッコまれた。 「もっと強くこすったほうがいい?」 「やめろって。つーか痛えし」  腕を強く掴まれる。思わず息が止まる。  それは、手の熱さのせいなのか。その眼差しから目を離せないからなのか。離したくないからなのか。  ただ、航大の濡れた髪や顔がとても綺麗で、なんだかすごく苦しくて。  まるで水中にいるかのように、息ができない。 「……腹減った。出ようぜ」  何事もなかったかのように、腕から手が離れた。 「えっ、もう?」  揺れる水に翻弄されながら、私と違って器用に進んでいく航大の背中を必死に追った。
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