アイちゃんとの出逢い

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アイちゃんとの出逢い

アイちゃんは19で港近くの側溝で捨てられて冷たくなって発見された。 夢の一人暮らしをして家を出て行き、 変わり果てた姿で実家に帰った娘を 両親や家族は…… アイちゃんと私の出逢いは何てことない所謂ナンパだった。そう私はとても軽い男だった。友人と夜な夜なクルマで街を流しながらナンパばかりしていた。しかもほぼ毎夜。 「こんばんは。ねぇ〜どこ行くの?」 「よかったら送って行くょ?」 そんな会話の繰り返し。 ほとんど無視されるかよくて話だけで なかなか落とせない。 それでもたまに落ちる子がいるのでやめられない… 私は当時小さな雑貨店を営んでいてた。その日は夜中一人で店に用事で行く途中だった。そこへオンナらしい人影が見えた。 『こんな夜中に何してんだ?』 と思いながらクルマを降りる。ここでコツがある。どうでもいいことだが、これもクルマでナンパしていた頃の鍛えたワザで、必ずクルマから降りて行って安心感を与えて喋る。中途半端にクルマの中から喋るものではない。 そして話術でオンナを落とす自身はあった。クルマを降りチャラ過ぎず紳士的にイケメン風な笑顔をつくり、いつもの調子で 「こんばんは。こんな夜中にどこ行くの?」 と声をかけると 「ちょっとびっくりしてたが、少し微笑みながらちょっとコンビニへ…」 と応えてくれた。私はそこで直ぐにこの子は落とせると僅かな自信があった。 ナンパで鍛えた感覚は伊達ではない… 普通だったら無視し続けて急ぎ足でその場を離れるか、嘘でも彼氏との待ち合わせと言うかだ。 しかしこの子は普通に言葉を返してくれた。しかも少し微笑みながらだったのでいけると思った。 あと 『ちょっとコンビニへ…』 で、この辺に住んでることがわかる。 夜中歩いてる他の子とは違う。ヒマで誘って欲しいのか、ただ単に純粋なのか… いずれにせよ、会話が途切れぬよう話し続けた。 「えっ夜中だけど仕事は何してるの?」 「いま探してるところです…」 この言葉で完全にいけると確信した。 「あっそうなの?丁度良かった。仕事あるょ?」 案の定、食いついてきた。多分仕事の話でなければ食いついてこなかったのかもれない… ナンパといっても男の目的は様々で、 私の場合はただのヒマ潰しと落ちるかのゲーム感覚でナンパに明け暮れていた。 しかし、この子の場合他の子とは違って真面目で純粋そうに見えたので、本当に店でバイトをさせようと思いその話をした。するとこの子も安心し信用してくれて改めて会うことにした。 この日がはじめて出逢った遥風が心地よい夜のことだった… 小柄で可愛らしい純粋なこの子は19で名前はアイちゃん。一人暮らしが夢で地方から最近市内に出て来たばかりだと言う。 私の雑貨店でバイトさせるがアイちゃんは仕事態度も良く、愛想も良かった。仕事外でも市内をあまり知らないアイちゃんと買い物に付き合ったりもしていた。 ある日私が 「アイちゃんの家へ行っていい?」 と軽く聞くと微笑みながらも周りから 『社長』と呼ばれていたので、アイちゃんも 「うん、いいょしゃちょ〜」 と言ってくれた。本当に素朴で純粋なアイちゃんだった。 数日後、部屋まで遊びに行くことになり、私の店から5分もかからない4階建マンションの2階。カーテンの色もステキなアジアン風で年頃の可愛い部屋だった。 サラダがメインの食事も作ってくれた。 アイちゃんは 「美味しい?」 と聞いてきた。 「・・・」 わざと無視した。 「ねぇしゃちょ〜美味しいの?」 と聞いてくるアイちゃんに、 「モチロン美味しいよ!」 っと答えると アイちゃんは大きな瞳を細くしてとても嬉しそうに喜んでいた。終始二人とも笑顔で話をしてその日は帰った。 アイちゃんは素朴で純粋だから一緒にいて心が休まるというかとても癒される。 ある日、私は事情があり店をたたんで県外に出る事になり、アイちゃんもまた仕事を探さないといけなかった。 特にアイちゃんのことも気にせず数ヶ月後、地元に帰ったら友人から 「知ってる?アイちゃん殺されたってよ!」 と言われた。 言葉を失った…… そしてどこでわかったのか当時、私が借りていた隠れ家的溜まり場のマンションに刑事が5、6人乗り込んで私を探しに来たとのことだったが人伝で詳細不明。 一瞬、訳がわからなかった。刑事が私を探しているのは、あのことかこのことかアイちゃんのことか…私自身2、3心当たりがあったがどのことかわからなかった。 そう、何故私があのタイミングで県外に出て行ったのか? 『 ごめんね、アイちゃん…』 そして後悔することとなる…
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