運命に背く愛1

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そんな二人は、もう大人になって、秋は、社会にもまれながら、日々一生懸命に暮らしている。王子様は、今も変わらず王子様だったが。 「今は、ちょうど納期近いから遅くなる」 秋は清治が淹れてくれたコーヒーを飲み、同じようにつくってるはずなのにいつもなんでこんなに美味しく作れるのか疑問に思いながら、さっきの清治からの質問にそっけなく答えた。しかし答えたあとすぐに後悔が襲ってきていた。いつも何故だかそっけなくなってしまう。ほんとはもっと話したいのに言葉は素直に出てこない。毎回、心の中で反省会をしているのに、唇は、全く学習してくれない。そんなじれったさが全く表情には現れていない。相変わらず、清治に愛想を見せることができないような、そんな自分は、王子様の求めるお姫様ではないんだ。秋は、清治の海外出張のお土産の、イタリアかどこかで作られたという、おそろいのコーヒーカップのふちを指でなぞりながら、清治にばれないぐらいのため息をそっとついた。 「じゃあ、次会えるのは週末だな」 そんな秋にもなれっこな清治は自分もテーブルにつきながらそう答えた。彼は、座ると机の上のタブレットで、ニュースをチェックしていた。秋は、その返答にそっけなく答えた自分が悪いのにがっかりしていた。遅くなっても会いたいと言ってほしかった。自分は、そんなこと相手に言ったこともないくせに勝手に恨みがましく思ってしまう。そんな自分に嫌気がさし、次会えるのは週末の恋人を、気付かれないように眺めながら、またコーヒーに口をつけた。
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