運命に背く愛2

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「ど…こだ?…」 目を覚ますと目の前の景色が見慣れた自分の部屋ではない。段々覚醒していく頭が、窓からもれる光をとらえた。外はどうやら、昼くらいみたいでカーテンから暖かな太陽の光がほんのりのぞいている。 腰がいたい……?秋は腰を何処かでぶつけたのかなとぼんやり思いながら宙を眺めていた。すごい倦怠感だったが、なんか満たされたような気分でもあった。まるで雲の上にいるようなふわふわとした浮遊感に包まれ、身じろぎをした秋は馴れ親しんだ甘い匂いが鼻かすめたのが分かった。甘い甘い蜜のような香りが秋にまとわりついてくる。その絡まりついてくる甘い香りに、昨日のことを走馬灯のように思い出した。記憶は曖昧で途切れ途切れしか覚えていないがなにをしたのかは、神様は忘れさせてくれなかったらしい。やってしまった……。秋は頭を抱えたくなった。嫌な予感がして、なめらかな手触りの羽毛布団の中のそおっとめくってみると秋は清潔な服に着替えさせられていた。裸ではないことに安心したが、すぐに、自分を着替えさせたのが清治だということに気づき、顔の中心に熱が集まってくる。そしてどうやらお風呂にもいれてくれたみたいで、清潔な体から清治の匂いが漂ってくる。まるで全身、清治に包まれているような気分になり、それだけで、簡単に体の奥に火がつきそうになる自分がいて、少し怖くなる。お風呂にいれられてるときの記憶ない……。恥ずかしくて死ねる。 秋は顔に手で覆い、しばらくじっとしていた。やっと意識がしっかりしてきたので、体を少し起こし、落ち着いて周りを見ると、どうやら清治の家のゲストルームだった。清治の家の中より調度品が豪華なこの部屋は、秋には落ち着かなく、ソワソワしてしまうが、生々しい現場で起きるよりましか…。なんて考えがら秋はベットから降りようとした。もちろん、ここまで誰が運んでくれたのかは、なるべく考えない。さっきから、チラチラでてくるあの男はどこへ行ったのだろうか。秋は、ベットから降りて、探しにいくことにした。 「秋、起きたのか?体は大丈夫か?」 「うわあぁぁぁ」 いきなりドアを開けて入ってきた清治に驚き、ベットから出ようとしてきた秋は、バランスを崩し、ベットから落ちそうになった。落下を覚悟して、とっさに目を瞑る。体への衝撃を庇おうと体を丸めたが、なかなか落ちる気配がないので、仕方なくゆっくり目を開けるとすぐ目の前に清治の顔があった。 「ひやあぁぁっ」 秋は驚いて飛び退き、そのまま頭を大きなベットの端でぶつけてしまった。 「いたあっ、、、」 「あきっ?大丈夫か?」 秋は頭を抱えながら、どんくさい自分がうらめしく思った。なにも、こんな間抜けな姿を清治に見せなくてもよかったのではないか。絶対、今週の星座占いは最下位だな。秋は恨めしそうに清治をにらむ。 「急に来ないでよっ!びっくりするじゃん」 「なんだ、そんなこと言う元気があれば大丈夫か」 清治は少し微笑んでいた。それを直視してしまい、言葉がつまる。明らかに逆ギレなのに、その顔は反則だと思う…その慈しむような顔に心臓の鼓動が高まる。 やばい…清治の顔が見れない… 秋は顔が赤くなってないか心配でとっさに、ベットに戻り壁の方を向いて寝転んだ。清治がベットに腰をかけ、そのベットが少しだけきしむ音に、反応して、またドキドキが増える。年代物のアンティークのベットは、すこし動く度に、いらない音をたてるのだ。昨夜の断片的な生々しい思い出が甦り、下半身に血液が集まってくる。 なにに反応してるんだ、俺。 最近、清治のことを好きな自分に気づいたうえに、秋は健全な男子高校生なわけで、無理もないことだった。しずまれ、鎮まれ、しずまれ、こういうときは、父親の顔を思い出すといいとどこかでよんだな、父さんでてこい。秋は冷たい壁に顔をくっつけ、火照りをとっていた。その間、何故か清治は一言も話さなかった。秋から話すわけにもいかず、部屋には変な沈黙が続いていた。耳にいたいほどの静寂が辺りを覆う。互いの呼吸の音がやけに大きく聞こえた。
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