命の糧

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命の糧

「トカプチ、こっちへ来い。時間だ」  岩に敷き詰めた藁の上に乱暴に投げ出されると、すぐに着ているものを剥ぎ取ろうと獣の手が伸びてくる。毎度ビリビリに破かれるのでは着るものがなくなって困るので、結局今では俺も脱ぐのを手伝う始末だ。  白い上衣を胸まで捲りあげて素肌を露わにしてやると、冷気に震えあがる間もなく、熱い獣の息遣いと生暖かい舌が、俺の素肌を隈なく舐め上げてくる。 「んっ……くっ……」  やがて舌は乳輪に達し、そのままパクっと大きな口に咥えられる。毎度その鋭利な牙で乳首が食いちぎられないかと恐怖に震える瞬間だ。だが獰猛な狼の顔と獣の手を持った獣人のロウは、俺を傷つけることはなく、胸の突起に器用に優しく吸い付いて来る。  ちゅうちゅうと卑猥な音が岩穴の中で反響しながら広がっていくのは、いつもながらに恥ずかしい。   「あぁお前の乳は、今日も美味しいな」 「もう言うなっ!いちいち」  更に勢いづいたロウの舌先が、まるで乳を絞り出すような動きをしだすと、ジュッ、ジュッ……っと濡れた水音が、迸っていく。 「つ……冷たいっ」 「震えているな。寒いのか」  ロウの顔の毛並みは氷柱のような状態なので表面がとても冷たいのだ。だから俺はこの行為をされる度に、いつか凍死してしまうのではと怯え震えてしまう。 892ff721-6e2c-4801-9006-e3ec2b687275 「だっ大丈夫だから、続けろ」  でもロウがこの凍った大地で生きて行くためには、俺の胸から放出される乳が必要なのを知っている。だから躰の力を抜き、彼が満足するまで動かずにじっと我慢してやる。 「んっ……」  眼を閉じると、懐かしい故郷の風景が浮かんで来た。  ここに連れて来られて、もう一カ月近く経ったのか。明るい太陽光がさんさんと降り注ぎ、綺麗な小川が流れ、若草色の草原が広がる北の大地で、俺は十六歳の誕生日を迎えた日まで、普通に暮らしていた。  ただ……特異な体質を隠しながらだったが。
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