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そこから海沿いの道を歩きながら、二人は山下公園に向かう。歩いて約三十分、公園のベンチで一休みする。
「あの、倉科さんって、休みの日はよく外出するんですか?」
「いや、週末二日のうち一日は家で片付けしたりして潰れてしまうから、気が向いたら一日は出かけるかな。車があるから、ドライブがてら郊外に出かけることが多い。佐倉はどうしてる?」
「私も倉科さんと同じかな。一日は家事で終わって、もう一日で友人に会ったり、実家に帰ったりします。時々顔を出さないと心配みたいで……」
「佐倉は家族に大切にされているんだな。まあ、親からすれば女の子だから心配なんだろうな」
二人が会話していると、通りすがりの観光客が倉科にカメラのシャッターを押してくれないかと頼んでくる。快く引き受けて写真を撮ると、
「あの、お二人の写真も撮りましょうか」
と声をかけられる。断ると思いきや、倉科は
「それではお言葉に甘えて」
とスマホを渡すと奈々子と並んで写真を撮った。
その後、二人は中華街まで歩いて行き、早めの夕食を食べた。
「もう少しおしゃれな所にしてもよかったんだけど、横浜って言うと中華料理って思ったから佐倉にお付き合いしてもらいました」
「中華料理って好きな人は多いでしょ?」
大皿から取り分けた海鮮料理を食べる奈々子に倉科が言う。
「中華料理以前に、あまり量を食べない子もいたりするからね。佐倉は本当に美味しそうに食べるよな」
「そんな、いつもおなかをすかせているように言わないでください」
「いや、褒めてるんだけどね。あと、中華料理だけは一人では注文しにくいんだ。二人いればいろんな物を頼めるからね。」
二人の入った店は広東料理の店で、海鮮料理とマンゴープリンがとても美味しかった。
帰宅後、奈々子のLINEに倉科から写真が届いた。公園で撮った海を背景にした、いかにもデート中のツーショットだ。
この写真を見た人は、二人の関係をどう思うのだろうか。恋人同士?そんなことを考えると少しほろ苦い気持ちになった。
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