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Third Date
仕事が始まったある日のこと、奈々子たちの課でちょっとした事件があった。奈々子の同期の社員が、取引先からの注文の変更を伝え忘れ、その後の対応も悪かったため、契約をやめるやめないの騒動になっていた。最終的に、係長や前任者の倉科が先方にフォローに出向き、事なきを得たが、同期の池谷はかなり落ち込んでいた。
その週末に同期会があり、みんなで社内の情報交換や愚痴などで盛り上がる。お酒も大分進んできたところで、近くに座っていた池谷に話しかけられる。
「ねえ、佐倉、この前はお前にも迷惑かけただろ。ごめんな」
「私の方は大丈夫。解決してよかったね」
「……まあ、解決したけど、係長や倉科さんが一緒になって頭下げてくれたから。俺だけじゃ、どうにもならなくて。倉科さんには、仕事での失敗は仕事で取り返すしかないって言われたよ。これからの頑張りに期待していると言われたら、頑張るしかないな……」
どちらかというと優しいと思っていた倉科の意外な一面を知った気がして、奈々子は少し戸惑っていた。でも、その厳しさはなんとなくではあるが、愛のある厳しさなんじゃないかなと思った。
「……佐倉にこんな格好の悪い話するつもりはなかったんだけど。でも、これからもよろしくな」
「こちらこそ」
懇親会はおよそ二時間で終了した。帰りの電車でスマホを見ると、倉科から週末の行き先を知らせるメッセージが届いていた。
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