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石ころ
つまらない 誰と居たって
好きな子は盗られたし
そんな気持ちで歩いていた いつもの道
かたわらに 腰丈の段差
パーキング 小石がはみ出している
ふと手を伸ばして 持ってみた
意外な重みに驚いた そのとき
よみがえったのは 幼い頃に
飼っていたチビすけ
最後にくるんだ紙 栗の木の下まで
両手に感じていた重み
違うのは その石の温かさ
そう 生命の証
そっと戻して そんなわけないと思いつつ
じゃあな、と撫でてみた
そのとたん ゾッとした
してはいけないことをした───
聴こえてはいけない旋律が
私を呼び始めて
私は慌てて空を仰いだ
チビすけは 楽しそうに
お日様のそばを走りまわっていて
私をふり向き 一声鳴いた
あっけなく
悪魔の気配は消え去った
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